西日本豪雨災害支援ボランティア参加者による座談会(3/7ページ)

伊藤 被災地では、被災された方と触れ合う機会はありましたか?

福島 支援に入った家によって、依頼された家の方がいる場合と、最初だけ顔を出して指示だけして帰る場合と、いろいろでしたね。僕らが行ったときは、2日目のお婆ちゃんは作業中もずっといたよね。

倉本 いましたね。

福島 座って、見てた。

杉岡 僕らのときは場所が側溝だったから、周りはボランティアの人だけで、住民はいませんでしたね。

伊藤 周りのほかのボランティア参加者や、被災された方々はどんな様子でしたか?

武内 僕が2日目に行ったときは、広島の大学生がボランティアのリーダーをやっていて、その人が周りの人間に対して、明るく、やる気を出させる声掛けをしたり、指示をしたりしていたので、そのときはずーんとした重い空気じゃなくて、「少しでも広島の人たちのためになるんだったら、自分も頑張らなくちゃ」と思えるような、明るい雰囲気になりました。

伊藤 作業をずっと見ていたお婆さんはどんな雰囲気でしたか?

福島 そのお婆ちゃんは、「なにもできないもんで、悪いね」なんて言って、ずっと座って見ていました。そんなに落ち込んでいる感じではなかったですね。
自分は東日本大震災のときにも東北に3回くらいボランティアに行ったんですが、それも含めて、ボランティアセンターに作業を依頼している人は、復興に前向きになれている人が多いのかなと感じました。逆にボランティアに依頼することもできない人ほど、気持ちが落ちちゃっているのかなという印象を受けました。そうした人たちにどう手を差し伸べていくのかが課題ですね。
今回、1日目に支援に入った家の方々は、僕たちが居間の泥出しをしているときは、自分たちで台所の掃除をするとか、別の場所で作業をしていましたね。

梶井 家主の人がボランティアセンターに依頼するんですか?

杉岡 そうですよ。

鈴木 ボランティアも勝手にはできないので。

杉岡 ニーズ集めをする必要があるんですよ。

福島 この家ではどういう作業の必要があって、何人必要で、それを誰に行ってもらうかって、広島県災対連の人が振り分けてくれたと思うんですけど。

梶井 なかには支援が要らないっていう人もいましたね。どんなに被害がひどくても。

鈴木 自分が聞いたのは、床下から土砂出しとかしても、最後には家を壊してしまうという家もあるみたいです。ボランティアに作業依頼せずにすぐ家を壊す人もいれば、ボランティアに頼んで土砂を出したあとで家を壊す場合もあるって聞いて、それはそれで仕方がないけど、ちょっとやるせない気持ちになりますね。

杉岡 床下から泥が出してある家と、泥がそのままの家だと、壊すときの費用や手間が全然違うんですよね。

鈴木 だからボランティアに頼むんだってわかってますけどね。

杉岡 皆さんが支援に入られた家で、そのあと住めそうな家ってありましたか?あれだけ泥を被っちゃうと難しいですよね。畳はほぼ腐ってしまいますし。

鈴木 あと、一度災害が来た場所に、お金をかけてあらためて住むかという問題は大きいと思う。

伊藤 東日本大震災のときも、一度津波を被ってしまうと、もうそこには住まない人が多いと聞きました。

杉岡 この先、自分の代ではもうないかもしれないけど、子の代、孫の代でまた同じようなことが起きるんだったらと、住んでいた土地から離れる人もいれば、ずっと住んでいた家だから戻りたいという人もいますね。

梶井 小屋浦地区では、山の岩が崩れ落ちてきて、川をせき止めてしまってましたね。

伊藤 土は粘土質だったんですか?

杉岡 あそこは粘土じゃなくて真砂土、砂だよね。

福島 なんかもう砂浜歩いている感じでしたね。

伊藤 静岡でもし災害が起きたらって考えたことはありますか?

梶井 静岡で怖いのは浜岡原発ですよね。活断層の真上に建っているし。停止はしているけど、燃料を冷やしつづけないと爆発してしまいますよね。もし爆発したら、周辺の地域も人が住めなくなってしまう。止まっていても危ないと思います。

杉岡 そうですね。

伊藤 島田市も30キロ圏内に入っていますよね。

梶井 東日本大震災のときは、福島の原発事故がなかったらもっと早く復旧できたのですか?

杉岡 東北でも、岩手とか北の方では津波被害があったあともすぐ人の手が入れるんですよね。でも南の福島では手をつけることができないので、もう6~7年手付かずのまま放置状態ですね。それだけ経つと避難者も避難先に住んでしまうんですよね。だから福島にはもう帰ってこないし、避難者が戻ってこないから、行政の方も復旧にあまり積極的ではないですね。

伊藤 杉岡さんは福島に4年間行かれていて、住民が戻ってこないという実感はありましたか?

杉岡 東日本大震災のときは、原発事故だとか前例のない被災のもとで、復旧・復興が遅くなってしまったというのがあると思います。

伊藤 被災地は復旧・復興できているんでしょうか?それとも報道がなくなっただけなのでしょうか?

杉岡 僕はいまでも福島でお手伝いをさせていただいているんですが、被災された方で、いまでも変われない人もいるんですよ。周囲や国が、あんなに急いで「復旧だ、復興だ」なんて言っている一方で、心が置いてけぼりにされている人がたくさんいます。ただ、そうした人のことをメディアも報道しないんですよ。被災地の後ろ向きなところは取り上げず、復興に前向きな人だけをクローズアップするような報道ばかりなんですね。だから実際に行ってみないとわからないことがある。メディアもボランティアじゃないので、数字にならない報道はやらないんですよ。歯がゆいですよね。

伊藤 日の当たらないところにこそ目を向けないといけないんですね。

 

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