中野晃一インタビュー(3/4ページ)

 三つ目なんですが、公示の前に4野党の政策合意が7項目がありました。当初の市民連合発足のときの三つの問題――戦争法廃止であるとか、改憲阻止であるとか――ここで「個人の尊厳を擁護する政治」というものが膨らんできたのかなという風に考えています。
わたしたちは自治体の労働組合ですので、やはり安全安心な公共サービスを住民の皆さんに届けるということが使命だという風に考えています。そういう意味では、格差貧困をどう公的に是正していくのかということが大事だと、公共サービスを皆さんに平等に提供できるということが大事だという風に考えております。
さきほどもお話にあった、政治の主軸が新自由主義というかたちで、これを解体していく方向というものがこれまでの流れだったわけですが、それに対抗する意味で、この「個人の尊厳を擁護する政治」というもののかかわりをお聞きできればなと思います。

中野 この間の生活――雇用もそうですし、経済の破壊というものが、やっぱり新自由主義化する政治によって押しすすめられてきたということを踏まえる必要があるんだと思います。
さきほど、対米追随的な経済・安保政策の路線という――いわゆる「改革保守」というようなグループの流れについてお話をしましたけれども、そういった意味では戦争法、あるいは立憲主義を蔑ろにして、集団的自衛権の行使を容認したことと、経済においても、公共サービスについても、とにかく自己責任、そして弱者切り捨てということで、われわれの生活基盤を壊すようなかたちで再編していくことというのは、決して無縁ではなかったと思うんです。

いずれにしても、米国型の経済だったり、安全保障のあり方ということに日本をどんどん似せていこうというプロジェクトが進行してきている部分がやはりあると思います。
残念ながら日本においてはそれが非常に根強くて――それも自民党のなかだけではなく、この間もずっとみんなの党だ、維新だ、そして今度は小池さんだというようなことで、そしてもちろん民進党の一部においてもそういったような意見がそれなりにあってですね、そしてあるいはいま自由党の小沢さんにしても、もちろんかつては新自由主義の騎手だった時代もあったわけで――そういったようなものが非常に複雑に絡み合っているなかで、実態としては政治のなかでかなり主流化してきてしまっているところがあったと思います。

ただ、ここ数年、日本以上に新自由主義化ということでいえば先進国と言えてしまう米国や英国などにおいて――サンダースだとかコービンだとかですね――正面から「こういったものはおかしいんだ」と言う政治家が活躍をするという状況が生まれてきています。
わたし自身の感覚だと、日本はあともう少しかな――というくらいに思っていて、やっぱりそういう「転換」というものが見えてきている部分があるのだという風に思っています。

じつは立憲民主党のなかでも、枝野さんというのは、ちょっとそういう意味では興味深いなと思っているところがあります。彼自身はリベラルかと言われると――本人も別にリベラルではないというようなことで――もちろん左派ではない。どちらかと言えば穏健保守の政治家なんだと思うんです。しかも日本新党出身ですから、別に小池さんだったり前原さんだったりとそんなに違うのかというのは見極めてみないとわからないところがあるのですが――ただ、これまでの言動というものを見ていると、改革、改革ということに対して、かなり距離感ある発言をじつはやってきた人なんですね。
わたし自身印象に残っているのは、都知事選のときにですね――まあ惨敗に終わりましたけれども――鳥越俊太郎さんの応援に行ったときに、枝野さんが――小池さんが当時はもちろんライバルの候補者だったわけで、枝野さんは党の幹事長だったわけですね――そのときにマイクを持たれたときに、「改革、改革なんてもう時代遅れなんだ」ということをいきなりおっしゃったんです。わたしは、民進党にこんなことを言う人がいるのかと、ちょっとびっくりしたんです。おそらくそういったようなところが、立憲民主党を結党することの考え方の背景にもあったのかもしれないと思います。

それは――もちろん彼だけでやっているわけではないし、彼のなかでも考えというのはいろいろ変わっていくかもしれませんが――立憲民主党ということで野党共闘を立て直していくときに、ひとつの鍵になっていくのは、より踏み込んだかたちで、なぜ戦争法に反対しているのか、なぜ立憲主義を守らなくてはいけないと言っているのかといったら、それは戦争がおこなわれること、そして戦争をつくる国をつくるということが、まさに「個々人の尊厳のある暮らし」というものを壊していくことと一体になってすすんでいくという、そこなんだと思うんです。
なのでわたしたちとしても、市民連合としても、「個人の尊厳を擁護する」そういう考え方に根付いて共通政策があるはずだということをうったえてきて――そのなかには雇用もあれば、もちろんジェンダーの問題だったりとか、いろいろあるわけですけれども――そういったものがあるのはなぜかと言ったら、それはやっぱり政治は何のためにあるのか、経済は何のためにあるのかと言ったら、それは一人ひとりが自分らしく尊厳ある暮らしを送れるように、そうするためにあるはずなんだということなんだと思うんですね。
そこでより肉付けをして、より踏み込んだ共通政策をつくる。
もちろん立憲野党のなかでもそれぞれ強弱があっていいと思うんです。うちはやっぱり特にこれに思い入れが強いとか、うちはこっちだというのはあっていいと思うんですけれども、そういったものを含めてうったえていくことができるのかというのが、非常に重要な点だと思っています。

 そうですか。枝野さんはそういう風におっしゃっていたんですね。もともと民主党は政権を取るときも、かなり小沢さんが英国の社会民主主義の政策を学んでスタートして、結局挫折するかたちになってしまったのかなという風に思います。
わたしたちとしても、非常にそのあたりを比べていただくことが大事なのかなと考えているところです。

中野 そうですね。

 

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