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静岡空港・建設中止の会
はじめに
県は、4月17日に第5回需要等検討委員会を開催し、国内線4路線、97万人から109万人、国際線9路線、32万人という新たな需要予測を出しました。県はこの新予測により、検討したどのケースでも黒字を出すといっています。はたしてほんとうにその通りなのでしょうか。
この新予測は次のような経過から、算出されたものです。一昨年の静岡空港専門家委員会において、静岡空港・住民投票の会(当時)は、県の前回の需要予測について、
(1) GDPの値が高すぎる、
(2) 近隣空港の便数差を考慮していない、
(3) 価格の値下げ競争を考慮していない
という理由から過大な予測であると批判し、静岡空港の利用は70万人以下であり、赤字になると主張しました。
これに対して専門家委員会は、「需要予測は妥当」としながらも、私たちの批判を一定受け入れ、国土交通省が新たな方法を示したら再試算をするという結論になりました。今回の新需要予測は、これを受けたものです。
これまで県は、178万人(7路線、96年旧運輸省へ提出)といっていたものが、121万人(6路線、2000年)、今回110万人前後(4路線)と、バナナのたたき売りのように数値を変えてきました。しかし今回の結果も、県民の実感からすれば、依然として過大な需要予測であることには変わりないと考えます。
たとえば、
三島の人が札幌へ行くのに、
●静岡空港を利用 74.9%、●羽田空港を利用 25.1%
静岡の人が札幌へ行くのに、
●静岡空港を利用 98.0%、●羽田空港を利用 2.0%
浜松の人が札幌へ行くのに、
●静岡空港を利用 97.3%、●中部国際空港を利用 2.7%
(いずれも業務利用、5.30第3回静岡県事業評価監視委員会配布資料「経路別選択確率」より、県より新しい資料が提出されましたので、前回のものと書き換えています)
これらは、ふだんの県民の実感から遠くかけ離れたものとしかいいようがありません。したがって県民を納得させるものでは決してありません。
図(1) 札幌便において、各都市からの空港を選ぶ確率(業務目的)



| Q なぜ今、需要予測がだいじなのですか? A 「静岡空港をほんとうに利用するのか」というのが、静岡空港に対する県民のいちばん大きな疑問だからです。「みんなが使う」「どのくらい使う」というのはどれだけ重要な事業かどうかのバロメーターであり、逆に「使わない」というのは、必要のない事業といえます。 またこれから行われる事業再評価でも、この需要予測はもっとも大きなテーマの一つであり、県知事がちらつかせている強制収用をする際にあらそわれる「公益性」の中心的な論点でもあります。 |
1 なぜ再び過大となったのか
それではなぜ、県民の実感からして過大となったのでしょうか。
県の需要予測の方法、「四段階推定法」自体は、一定現実を反映させたものと評価できます。また前回のものに対する私たちが批判した点、近隣空港との便数差・運賃の値引きの需要予測への加味を一定取り入れることを前提としています。
今回の新需要予測は、その方向は評価できるものの、その前提としての条件の設定に大きな問題があると考えます。これは、静岡県に住んでいて土地勘がなければわからないことがあります。私たちは、
その1 静岡空港を安く、近隣空港を高く設定した運賃
その2 静岡空港へは短く、近隣空港へは長いアクセス距離と時間
その3 静岡空港は多く、近隣空港は少なく見積もった航空便数
などの結果、静岡空港の需要が大きくふくらんだと考えます。具体的にそれを見ていきたいと思います。
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Q 県の需要予測は、どのような方法で算出されているのですか? つまり、運賃が安ければ安いほど、アクセスが早ければ早いほど、便数を多く評価すればするほど、その空港の選択率は高まります。 |
(1) 不当な運賃設定−静岡空港の運賃が羽田より低いのは理解できない
静岡、羽田、中部国際のどこの空港を選択するかの確率は、かかる経費(運賃+アクセスする費用)、かかる時間、利便性(便数)で決められます。その中で運賃を決定する際、静岡空港の運賃が安く、近隣空港の運賃が高く設定されています。
@低すぎる静岡空港の通常運賃
すべての基準となる静岡空港からの運賃が、不当に低く設定されています。札幌便を例に説明します。
1) 静岡空港の通常運賃は、羽田と名古屋の価格のみを元に、距離按分で設定されている。
図(2) 静岡空港における札幌便の片道通常運賃算出表
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| 東京 | 札幌 |
25200 |
822 |
| 静岡 | 札幌 |
28200 |
940 |
| 名古屋 | 札幌 |
28400 |
946 |
2) 羽田と名古屋の価格は、他の地方空港に比べ、距離の割には安い(需要や競争があるため)。
3) この結果、静岡空港の通常価格が規模・距離からして不当に安く設定されてしまい、たとえば小松空港−札幌よりも静岡−札幌の方が距離があるのに安いという矛盾がおこる。
図(3) 札幌便:片道通序運賃・距離
| 路線 | 片道通常 運賃(円) | 距離 (キロ) | |
| 新潟 | 札幌 |
25000 |
594 |
| 福島 | 札幌 |
26000 |
645 |
| 富山 | 札幌 |
29000 |
793 |
| 東京 | 札幌 |
25200 |
822 |
| 小松 | 札幌 |
31000 |
853 |
| 静岡 | 札幌 |
28200 |
940 |
| 名古屋 | 札幌 |
28400 |
946 |

このように運賃が安く設定されているため、次で述べる業務目的の運賃にも、観光・私用等目的の運賃にも大きな影響を与えます。
県は運賃を設定するときに、業務目的と観光・私用等目的に区分してそれぞれ計算しています。それは業務目的、つまり仕事のときは出張など、比較的急に命じられることが多く、事前に安いチケット(パック料金の他個人でも、各航空会社とも3週間前までなら、定価よりかなり安いチケットが手に入ります)を購入できる観光・私用等目的の場合とは違っているからです。業務目的は、値段は高いけれども空港に到着してから、直近の便などに自由に変更でき、その一方で観光・私用等目的は、値段は安いけれどもその便に拘束される、という違いがあります。
県は静岡空港の業務目的の運賃については、通常運賃と往復割引運賃の平均としています。また観光・私用等目的は、「類似空港」の「特定便・事前購入割引の平均値」の割引率を、通常運賃に掛けて求めています。つまりどちらも通常運賃がもとになっているわけです。
A 羽田より安い往復割引運賃設定
静岡空港の往復割引運賃を算出するのに「類似空港」の仙台15%、小松15%、福島16%、新潟15%の平均を使い、15%としていますが、今度は東京4%、名古屋5%を使っていません。先ほどの通常運賃を算出するときには安いグループを使い、往復割引を算出するときには割引率の多いグループを使うのは、いいとこ取りであるといわれても仕方がありません。
その結果、羽田からはるかに距離があり、競争も少ない静岡空港の札幌便の往復割引運賃が、羽田のものより安くなるという矛盾が出てきています。
図(5) 札幌便における往復割引運賃と距離の比較表
| 正規運賃(円) | 往復割引運賃(円) | 割引率 | 距離(キロ) | |
| 東京-札幌 | 25200 | 24200 | 4% | 822 |
| 静岡-札幌 | 28200 | 23900 | 15% | 940 |
B 高すぎる羽田の観光用運賃−札幌宿泊付きで2万円台を無視
県は、観光・私用等目的において、割引運賃を加味した運賃設定をしています。しかしこの設定についても、「特定便・事前購入割引の平均値」ということが記されていますが、具体的なデータや計算方法等の説明がありません。たとえば羽田−札幌便は、通常運賃が25,200円に対して17,078円と、32%の割引運賃を設定しています。これはより距離がある福岡便の15,660円(通常運賃は27,200円)と比較しても高いものであり、とても合理的な運賃設定とはいえません。またこの設定では、たとえば札幌往復宿泊付2万円台のツアーなど、観光利用の主力ともいえる包括旅行運賃(団体向け運賃)の存在を全く無視しています。
図(6) 札幌福岡の正規・観光・私用等目的・距離の比較
| 正規運賃(円) | 往復割引運賃(円) | 割引率 | |
| 東京-札幌 | 25,200 | 17,078 | 32% |
| 東京-福岡 | 27,200 | 15,660 | 44% |
(2) アクセスにおいて他空港を不利に取り扱う
今まで、運賃において静岡空港をいかに優遇してきたかということを見てきましたが、次のアクセス(近隣空港への経路・時間)において他空港を不利に扱っている実態をみたいと思います。他空港にアクセスする経路・時間を不利にすればするほど、静岡空港の利用率は上がるからです。
この分析は、3月28日の第4回需要等検討委員会で配布された「端末経路の状況」と「経路別選択確率」によっています。文字をクリックすれば、県が示したもと資料にあたることができます。
@ 羽田の場合
1) 自動車によるアクセス
●過大なアクセス時間 三島から5時間半、静岡から6時間半
県は羽田までのアクセスを、
静岡・三島−(東名高速)−用賀IC−(環八)−大鳥居−(131号線)−羽田空港
とし、なんと渋滞する「環八」を経路として選んでいます。これにより三島からだと339分、静岡からだと384分かかるとしています。つまり三島から羽田空港で飛行機に乗るまでに5時間半、静岡からだと6時間半かかるというのです。
これも県民の実感からはずれています。なぜこのズレが出てくるのでしょうか。
図(7) 羽田空港までの経路

赤:県民がよく利用する経路 緑:県が示した経路
県のアクセスの設定に対して、実際に羽田空港を利用している県民は、
静岡・三島−(東名高速)−横浜町田IC−(保土ヶ谷バイパス)−(首都高狩場線・湾岸線)−羽田空港
あるいは、
静岡・三島−(東名高速)−東京IC−(首都高)−レインボーブリッジ−(首都高湾岸線)−羽田空港
とアクセスすることが多いようです。これで行けば全線、高速道路を使用できるのでスムーズに行くことができます。
●乗換時間に羽田90分は過大
また県は、自動車を降りてから飛行機に乗るまでの乗換時間に90分見ています。車をおいてから1時間半の間があるということです。しかし実際には、駐車場からサービスの送迎バスがあって簡単に空港までアクセスできます。手続きにおいても羽田空港はたいへん合理的であるばかりでなく、便数も時間あたり3便程度ある便利な空港(乗り遅れても静岡空港とちがってすぐ次があります)なので、乗換時間はどれほど多くても他空港並み40分とすべきです。
(まして、便変更が可能な業務目的の利用で羽田で90分も過ごそうなんて人はいないでしょう。)
<三島市から自動車でアクセスする場合の搭乗までの時間>
| 羽田空港 | 静岡空港 | |
| 県が試算 | 339分 | 148分 |
| 私達の試算 | 217分 | 148分 |
| その差 、 122分 | ||
| 湾岸線を東名なみのスピード(80キロ)、保土ヶ谷Bを40キロで計算すれば195分 | ||
2) 鉄道によるアクセス
●静岡からも「こだま」で計算
新幹線の品川開業により、「こだま」は品川停車、「ひかり」は東京停車と発表されています。しかし今回の需要予測は、静岡、浜松、三島のどのポイントをとっても、「こだま」によるアクセスを前提にしています。前回の需要予測では、静岡からは「ひかり」を前提しているので、明らかに後退しています。
静岡から、こだま・品川経由で行けば乗車時間だけで98分なのに対して、ひかり・東京経由を使えば同じく89分となり、今回県が試算した「こだま」の方が明らかに静岡空港に有利です。
つまり、県の考え方では、品川駅ができたことによって羽田が遠くなるという現実離れした結果となっているのです。
●ムダな乗換でロス
また品川からの経路として、
品川−(京浜急行)−京浜蒲田−(京急空港線)−羽田空港
とし、乗換時間(京浜蒲田で10分間)を含めて28分を見込んでいます。しかし実際には、特急で直通があり、品川から20分で行くことができます。
まして、現在でも浜松町で出発時刻の50分前まで搭乗手続きが可能なのですから、品川を83分前に出るという県の設定はどう考えても過大です。
<静岡市から鉄道でアクセスする場合の搭乗までの時間>
| 羽田空港 | 静岡空港 | |
| 県が試算 | 339分 | 148分 |
| 私達の試算 | 217分 | 148分 |
| その差、 25分 | ||
A 中部国際の場合
1) 自動車によるアクセス
●浜松市から221分、岡崎から一般国道を利用 中部国際のHPでは91分
県は、浜松市から中部国際空港への経路として、
浜松−(東名高速)−岡崎IC−知立−(155号線)−中部国際空港
を見ています。岡崎から一般国道を通るというのです。全行程の半分を一般国道で行くというのです。
しかし中部国際空港のホームページを見ると、浜松市からのアクセスは、
浜松−(東名高速)−豊田JC−(第二東名)−名古屋南JC−(知多半島道路・知多横断道路)−中部国際空港
として、122キロ、91分を見ています。これは「2005年開港時に整備される路線を想定し、一般道路は実勢速度をまた有料道路は規制速度を想定し、独自に試算したものです」とあるものの、第二東名の名古屋付近の完成度は高く、静岡県内よりもずっと実現可能性が高いでしょう。ましてや「第二東名早期開通」をかかげる石川知事のお膝元でそれを否定するようなことは、おかしいではありませんか。
また中部国際に向かうための東名インターへのアクセスに、市内の東側にある浜松インターを利用し、西にある浜松西インターを利用しなかったのは意図的としか思えません。
これによって県の167分(乗換時間を入れると221分)と、中部国際空港のホームページの91分では、約1時間もの大きな違いが生じます。
図(8) 浜松市内から中部国際空港へ行くときの東名までの経路

赤:県民が利用する経路 緑:県が示した経路
図(9) 中部国際(セントレア)HPより

<浜松から自動車でアクセスする場合の搭乗までの時間>
| 中部国際空港 | 静岡空港 | |
| 県が試算 | 224分 | 112分 |
| 私達の試算 | 165分 | 112分 |
| その差、 56分 | ||
2) 鉄道によるアクセス
●浜松ひかり増発を無視
また今回の品川駅開業に伴うダイヤ改正で、浜松駅への「ひかり」停車(1時間に1本程度)が増えることを無視して、「こだま」だけで計算をしています。確かに、ひかりの停車はこだまに比べれば少ないですが、中部国際空港発の各地への便数と比較すれば無視してよいものではないはずです。
<浜松から鉄道でアクセスする場合の搭乗までの時間>
| 中部国際空港 | 静岡空港 | |
| 県が試算 | 170分 | 114分 |
| 私達の試算 | 151分 | 114分 |
| その差、 19分 | ||
(3) 評価便数の設定について 他空港の便数を過小に
●羽田・中部国際の実際の便数を水で割っている
静岡空港と近隣空港の便数差(空港の利便性の差)を加味するということが、今回の需要予測再試算のポイントと考えます。県は、これをどのように需要予測に取り入れているのでしょうか。
次の表は実際の羽田、名古屋の便数と、今回の需要予測に「説明変数」として用いた「評価便数」です。
図(10) 札幌便における実際の便数と評価便数
| 実際の便数 | 評価便数 | 評価本数 | |
| 羽田 | 46 | 22 | 17(静岡市) |
| 名古屋 | 13 | ? | 8(浜松市) |
●「前泊・後泊なく」という前提で、実際の行動とギャップが
そもそも「前泊・後泊なく」という前提が、なぜ必要なのでしょうか。実際利用客は、特に業務用において午前の会議に間に合うために前泊を行っています。また会議が長引いて、後泊を行う場合もあります。それがあるのに「前泊・後泊なく」という前提をつける必要があるのでしょうか。
また、静岡空港から午後に出る便で行けば現地で1泊必要なのに、これは便数としてカウントするというのも不可解です。
●「公共交通機関」という前提は、新幹線以外もあり得る
百歩譲って、「公共交通機関を利用して」という前提を採用しても新幹線の始発に間に合わない便はカットするということは納得できません。在来線でも十分利用可能です。たとえば静岡駅2時発の「ムーンライトながら」に乗れば、5時40分に羽田空港に到着し、十分6時25分の札幌行き始発に間に合います。(ビジネス利用で朝9時までに現地に行きたいが前泊はしたくなければこれを利用するしかありません)しかし県の需要予測は、自分で提示した条件でありながらこれを一切無視して計算しています。
また自動車のアクセスの場合も、同じように評価便数で計算していることは、納得できません。自動車でのアクセスは、新幹線のダイヤから設定した「評価便数」とは全く関係ないはずです。
第4回需要等検討委員会で配布した、都市別の選択率を算出している「経路別選択確率」の中に「評価本数」という項目があり、評価便数より低いこの「評価本数」で実際は計算をしたのではと思われますが、それがどう使われているか全く説明がなく、ブラックホールです。もしこれを使っているならば、札幌便が静岡空港6便に対して中部国際空港が8となり、ほとんど利便性の点で同じと計算されています。
●モデル式の説明がない−モデル式の信憑性に疑問
便数問題で、私たちがもっとも疑問に思うのは、モデル式の説明がないことです。資料の中には、「航空経路選択モデルを構築する際に用いた平成12年度全国幹線旅客純流動調査のサンプルは、個票データを集計し、各空港へのアクセス実績をもとに、複数の空港に対して選択可能性のあるサンプルを中心に採用した」としています。委員会の中では、口頭で岡山や福島などの類似空港のアクセス実績をもとに行ったと説明していますが、その内容が県民に対してきちんとわかるように示されておらず、具体的にどこの実績がどのように反映されたのかがわかりません。これはその他の「パラメータの推計結果」にもいえることで、どこからその数字を持ってきてどのように推計したのか全く説明がありません。
たとえば「前泊・後泊なく」という前提が、他空港の実績のサンプルの中に反映されているのかどうか、たいへん疑問です。他の空港は「前泊・後泊なく」を外してサンプルをつのり、静岡空港のみそういう前提をつけてその選択確率を有利にするということがまかり通っていたとすれば、これは信頼できないモデルだといわなければなりません。説明がない(できない)ということはこのような意図的操作によってできたモデルであることを疑わせるに十分な事実です。
(4) 札幌便6便は、誰が見ても過大
県は、札幌便等の運行便数(4便、5便、6便)によって感度分析を行っています。これは、札幌便の既需要予測値(2000年の需要予測)が、50万1千ということから、委員会資料の中の、「表5.3旅客需要と運行便数」「図5.3旅客需要と運行便数」によって設定したものです。


しかし6便の例をその資料から引くと、それは大阪・長崎便(年間60万人)、鹿児島・奄美大島便(年間35万人)からそれを設定しています。大阪・長崎便は、60万人台に乗っている県の(過大な)札幌便よりも、もうワンランク上の路線です。残る奄美大島便も小型機ばかりの離島路線であり、国土交通省の「航空需要予測手法に関する調査検討委員会報告書」においても通常の機材投入基準と、離島路線における投入基準は別になっています。これを同じに論じているわけですから、誰が見ても過大な設定といわざるを得ません。
また6便の札幌便で、そのうち5便の小型機を投入すると、採算性から高い料金設定になるであろうし、着陸料にも跳ね返り、空港の採算点も変化します。
またもし小型機ばかりの設定なら静岡空港は不要で、隣接する自衛隊静浜基地の利用で十分です。
(5) 生成量モデルにおけるGDP成長率
GDP1.5%〜1.9%は、県民の実感からすれば依然として高いと考えます。
2 問題にならない海外便
海外便については、今回の需要予測等検討委員会でほとんど議論されませんでした。
図(13)全国のホノルル便
| 空港名 | ホノルル便 週間便数 |
| 成田 | 68-75 |
| 関西 | 28 |
| 名古屋 | 7 |
| 福岡 | 7 |
| 札幌 | 6 |
| 仙台 | 4 |
| 広島 | 2 |
| 静岡 | 3 |
私たちは結論から言えば、海外便については全く検討に値しないと考えます。その理由として、海外便に必要な防疫や税関など国の機関は、チャーター便で実績を積んだ後に設置することとされているからです。開港当初は数万のチャーター便しか運行できないはずです。
もっともそれは県も同じ認識らしく、「費用対効果分析」の中の「供給者便益総括」では、国内便のみの収入によって供給者便益を算出しています。赤字を出すが出さないかの計算に最も重要な「供給者便益総括」で、海外便を考慮していないということは、県も開港年次に海外便は考えていないということなのでしょう。
3 費用対効果における静岡空港の採算について
つづいて直接需要予測ではないものの、空港の採算を考える上で重要な静岡空港の経常維持補修経費ついて考えてみましょう。県民の中では、県財政を圧迫するような「赤字の空港はいらない」との考えが強く、赤字、すなわち税金投入による空港の維持となるかどうかは厳しく注目されるところです。
離島や新幹線が通っていない不便な地域においては、県民の交通権を確保する意味で、たとえ赤字であっても空港の設置は県民合意となり得ます。しかし静岡県のように新幹線はある、他空港へのアクセスはいいという地域において、赤字でも空港を持つべきということは、とうてい県民合意にはならないでしょう。
前回の需要予測で5億2千万円といっていた経常維持補修経費を、県は4億4500万円にダウンさせました。これは国土交通省の「空港整備事業の費用対効果マニュアル」の数値を全面的に採用したものです。前回の5億2千万円では需要予測に示される「ケース1」の場合、赤字になるのは必至です(前回と比較して便数が減っているのでムリもありません)。私たちは前回の経費の見込みが、他空港の実績を静岡空港の実際の面積等で再試算して出した「精緻」なものであるのにかかわらず、今回マニュアルに書かれている単なるモデル的な数値におき換えるのは、赤字かくしであるとしか考えられないと思います。
ここの説明について、「静岡県庁の光と闇」の「検証!静岡空港需要等検討委員会1-3 〜専門家の不見識〜・静岡空港の管理経費のダンピングについて」を参照してください。
リンク http://www2.ocn.ne.jp/~sizuoka1/kusp1-3.html
| 図(12)供給者便益総括(開港年) | ケース1 | ケース3 |
| 着陸料収入 | 416 | 469 |
| 燃料税収入 | 68 | 71 |
| 地代 | 16 | 16 |
| 収入合計 | 499 | 557 |
| 維持補修費 | 445 | 445 |
| 供給者便益 | 54 | 112 |
また県が需要喚起の目玉としている駐車場の維持管理費は、今回の4億4500万円には入っていません。国土交通省は、この維持管理は受益者負担=有料で行うということを前提にしているからです。需要のところでは駐車場無料化でしっかり稼いでおいて、赤字かどうかを見る経常維持補修費にはそれを計上しないのは、あまりに意図的ではないでしょうか。
私たちは前回の5億2千万円でも、広い意味での維持経費として足りないと考えています。それは多くの赤字空港が、赤字で撤退しそうな路線に対して、税金で補填を行っているからです。たとえば佐賀空港では、利用者1人あたり数千円の助成が行われています。また岡山空港では着陸料の減額にとどまらず、午前便(みんなその日を有効に使いたいですよね)を確保するために、夜間駐機(午前に出発するため、夜間修理、点検などのメンテナンスを行うのに人件費はもちろん設備や部品代など莫大な経費がかかります。残念ながら地方空港では夜間駐機を実施しているところは少なく、大空港に限られます。そのため不便な午後便が多くなります。)の経費を補填しています。このように見るならば、空港を維持していくため県が支出するものは、単に「経常維持補修費」にとどまらないと、他の地方空港は示しています。
4 結論−「はじめに100万人ありき」で計算したのでは?
県民の納得をえられないならば、空港建設は中止すべき
県の示した新需要予測では県民の実感にあわないというところから出発して、なぜそういう結果になったのかということを考えてきました。今まで見てきたように運賃、アクセス、便数の各空港への選択を決める重要な部分で、意図的な設定が行われています。結論として、県は100万人=採算を確保するために、さまざまな前提条件を都合のいいようにいじってきたとしか考えられません。その結果、各都市からの選択確率に見られるように県民の実感から遠くかけ離れたものになってしまったのではないでしょうか。
こうした需要予測では、県民の納得は決して得られません。もし空港建設を進めたいというならば、需要予測をやり直すべきです。しかしいくら需要予測を行っても、現実をきちんと反映させなければ同じ結果となることは目に見えており、県民の納得が得られないならば、潔く空港建設は中止とすべきです。