静岡空港は、国の補助金の対象となりえる事業ではない

この文書は、1月に国土交通省に対して提出された文書です。国土交通省は、この文書を無視して静岡空港に対する補助金の継続を決定しました。「三位一体改革」で補助金の廃止・縮減が問題になっている最中にです。この文書を掲載し、あらためてその不当性を訴えたいと思います。


静岡空港・建設中止の会


はじめに


静岡県事業評価監視委員会は静岡空港について、2003年5月7日にスタートし、7月31日に最終意見をとりまとめるまで、計7回の審議を行ってきた。そして、県民の多くの声を無視してその結論として、「静岡空港整備事業を継続すること適当である」としたが、これは現実の検証に耐えられないものと確信する。この審議を振り返り、なぜ「現実の検証に耐えられない」とするのかを明らかにしたい。


静岡空港建設については、2001年6月、約27万人の署名で「静岡空港建設の是非を問う住民投票」請求が提出されたが、静岡県議会は9月にこれを否決した。知事は当初のこの請求に対しての賛成表明にもかかわらず、知事選で自分が勝利すると最後までその公約を貫かず、その否決を黙認した。


住民投票は、町や議会と、県民の意志が乖離したときに行われるものであり、それによって民意が行政に反映されるべきである。住民投票を実施しなかった静岡空港建設は、県民合意をとらなかった事業であり、私たち「静岡空港・建設中止の会」は、県民合意のない静岡空港建設の中止を要求してきた。


この事業評価監視委員会(以下、監視委員会)に対しても、特に「事業の必要性」、静岡空港の需要予測について、様々な意見を述べてきた。その経過を今一度振り返ることで、この委員会が、いかに多くの事実に目をつぶり審議をしたか、その結果、いかに本来の目的と違うかたちで結論を出したか、そして静岡空港の需要予測および費用対効果がいかにいい加減なものとなったかを検証したい。


これにより、現在行われている静岡空港に対する補助金支出の是非を検討する、国土交通省の「公共事業評価システム検討委員会航空部会」に対して、この静岡空港は国民の血税を投入するに値しないムダな公共事業の典型であることを国土交通省に申し入れたい。

1 目的を逸脱した審議内容 何のための監視委員会か


この静岡空港事業再評価は、国土交通省が事業採択後10年経過して継続中の事業について個別事業の再評価として義務づけているものであり、それに対応して静岡県においては、監視委員会によって具体的に審議が行われたものである。静岡県事業評価監視委員会設置要綱はその目的を、「公共事業の事業評価における客観性及び透明性を確保するため」としており、具体的には国土交通省が提示した再評価の視点、@事業の必要性等(事業を巡る社会経済情勢等の変化 、事業の投資効果(費用対効果分析の原則実施)、 事業の進捗状況 )、A事業の進捗の見込み、Bコスト縮減や代替案立案等の可能性にそって評価されるものである。


確かにその結論をもとに、県が国土交通省に提出した「空港整備事業に係る再評価実施内容」を見ると、この視点をもとに整理されている。


具体的には、「静岡空港整備事業の必要性については、」・・・「静岡空港についての新たな需要予測結果においても相当量の需要が見込まれること」、また「この予測結果に基づき、事業の投資効果をみると、社会経済的効率性を有する事業と評価し得るを有する事業と評価し得る」、「事業の進捗の見込みについて、静岡県としては、用地確保について話し合い解決に向け最善の努力を尽くしつつ、工事完成予定期日を念頭に置き、用地確保及び予算確保に万全を期することとして」、「継続」の理由としている。


県民の最大の疑問のひとつが、「静岡空港はほんとうに利用されるのか」ということであるならば、「事業の必要性」について、監視委員会で需要予測が議論されるのは当然のことである。しかしこの委員会でほんとうに「相当量の需要が見込まれる」ことが検証できたのだろうか。


監視委員会の向坂委員長は、5月7日の第1回の委員会で、「県が行っている公共事業について一定の年数が経過したものに対して、各所轄のそれぞれの基準、ルールを設けて、もう一度その公共事業の評価を見直し、その再評価に当たって、果たしてそれが身勝手な評価になっていないかどうか、そういうことを第三者的な立場から客観的にそれを監視していこうというのが、この委員会の役割」と雄弁に語った。


しかし「身勝手な評価になっていないかどうか」「客観的に監視していく」と高らかにうたいあげたにもかかわらず、結論を出した7月31日の監視委員会の直後の記者会見では、「専門家の出した結論を、われわれがとやかく言うのはおかしい」(読売新聞)と当初とはまったく180度違うことを言っている。もしこのような姿勢で、監視委員会を運営したのなら、委員会の「公共事業の事業評価における客観性及び透明性を確保するため」という目的は達成できるはずがない。


さらに同じ記者会見の場で同氏は、監視していくための主要な論点である「事業の必要性」を示す需要予測とその結果に基づく費用対効果について、このように」を示す需要予測とその結果に基づく費用対効果について、「委員会は県の事業継続という結論について、その妥当性を判断するだけで、需要予測や土地収用法の適用など政策的なことを検討する場ではない」(毎日新聞)という驚くべき発言をしている。政策の総合である個別の公共事業について、「身勝手な評価になっていないかどうか」「客観的に監視していく」ために、「政策的なことを検討」しないで、いかなる「監視」ができるのだろうか。


このように委員会の目的すら理解していない委員長が運営した委員会の出した結論に妥当性がみとめられるのだろうか。これについて「否」というほかはない。


次に、具体的な事実を挙げて、実際に、委員会の目的に逸脱するどのような審議がされたのかを振り返ってみる。

2 ずさんな需要予測の検討


県民の最大の疑問である需要予測について、どのように審議されたかを振り返ってみる。


私たちは、第4回需要等検討委員会が3月28日に110万人前後(その後106万人に確定)という新需要予測を明らかにすると、「県民の実感からかけ離れた新需要予測」という見解を出した。新需要予測によれば、仕事で札幌へ行くのに三島の人は65.7%、静岡の人は97.7%、浜松の人は97.7%が静岡空港を利用するという空港選択確率(それは後にそれぞれ74.9%、98.0%、97.8%に修正)について、「県民の実感からかけ離れている」と批判した。その原因を他の地方空港にくらべて、不当に安く運賃が設定されているなど、前提条件が現実離れしたものを使っているからだと指摘した。


その後、「県民の実感からかけ離れた新需要予測を検証する−ここがヘンだよ新需要予測」として具体的に事実と合わないどのような前提条件が使われているかを各項目に分けて指摘した。


これは5月8日に監視委員会が始まると、会は委員全員に配布した。県は監視委員会の中でこれに対する反論をし、それに対し回を変えて、またこちらが反論するかたちでやりとりがされている。


反論のやりとりは次の通りである。


2003年

月日

主体

事柄
4月18日 静岡空港・建設中止の会 「県民の実感からかけ離れた新需要予測を検証する−ここがヘンだよ新需要予測」を発表
5月21日 静岡空港・建設中止の会 上記文書を監視委員会委員に配布
5月29日 静岡空港・建設中止の会 「需要予測感度分析」「費用対効果を考える」を記者会見で発表
5月30日 静岡県 「静岡空港の需要等再試算調査報告書」を監視委員会に提出
6月7日 静岡空港・建設中止の会 「なぜ小松便をもとに通常運賃を算定したか」を記者会見で発表
6月11日 静岡県 「静岡空港の需要予測結果に関する県の考え方」を監視委員会に提出して反論
7月4日 静岡空港・建設中止の会 「需要予測『県の考え方』に反論する」を記者会見で発表
7月16日 静岡県 「需要予測に関する静岡空港・建設中止の会の反論に対する県の考え方」を監視委員会に提出
7月30日 監視委員会 具体的な審議をせず、「建設は適当」との結論を出す。

ここで「やりとり」と書いたが、私たちは文書で反論するだけで、監視委員会では委員の前で県当局が都合のいい説明をするだけで、こちらが指摘したことについて素通りしたり、ねじ曲げたり、全くフェアなやりとりではなかった。これだけ見ても、「静岡空港に係る事業評価監視委員会の審議について」で述べられているように「空港建設反対派からの公開書簡に対し、県の反論、さらに反対派からの再反論を求めるなど双方向の審議を実施した」などとは決していえるものではない一方通行の繰り返しだった。


どこがどう一方通行だったか、具体的な論点項目について、見ていくことにしよう。

(1) 運賃問題


1) 高すぎる運賃設定を指摘−「県民の実感からかけ離れた新需要予測を検証する−ここがヘンだよ新需要予測」


私たちはまず第一に、静岡空港の運賃の設定が不当なものであることを指摘した。「県民の実感からかけ離れた新需要予測を検証する−ここがヘンだよ新需要予測」において、次のように指摘している。

(1) 不当な運賃設定−静岡空港の運賃が羽田より低いのは理解できない
静岡、羽田、中部国際のどこの空港を選択するかの確率は、かかる経費(運賃+アクセスする費用)、かかる時間、利便性(便数)で決められます。その中で運賃を決定する際、静岡空港の運賃が安く、近隣空港の運賃が高く設定されています。
1) 低すぎる静岡空港の通常運賃
すべての基準となる静岡空港からの運賃が、不当に低く設定されています。札幌便を例に説明します。

ア 静岡空港の通常運賃は、羽田と名古屋の価格のみを元に、距離按分で設定されている。

図(2) 静岡空港における札幌便の片道通常運賃算出表

路線 片道通常運賃(円) 距離(キロ)
東京 札幌 25,000 822
名古屋 札幌 28,400 946
静岡 札幌 28,200 940

イ 羽田と名古屋の価格は、他の地方空港に比べ、距離の割には安い(需要や競争があるため)。
3) この結果、静岡空港の通常価格が規模・距離からして不当に安く設定されてしまい、たとえば小松空港から札幌よりも、静岡から札幌の方が距離があるのに安いという矛盾がおこる。


図(3) 札幌便:片道通序運賃・距離

路線

片道通常運賃(円)

距離
(キロ)
新潟 札幌 25,000 594
福島 札幌 26,000 645
富山 札幌 29,000 793
東京 札幌 25,200 822
小松 札幌 31,000 853
静岡 札幌 28,200 940
名古屋 札幌 28,400 946

このように運賃が安く設定されているため、次で述べる業務目的の運賃にも、観光・私用等目的の運賃にも大きな影響を与えます。
県は運賃を設定するときに、業務目的と観光・私用等目的に区分してそれぞれ計算しています。それは業務目的、つまり仕事のときは出張など、比較的急に命じられることが多く、事前に安いチケット(パック料金の他個人でも、各航空会社とも3週間前までなら、定価よりかなり安いチケットが手に入ります)を購入できる観光・私用等目的の場合とは違っているからです。業務目的は、値段は高いけれども空港に到着してから、直近の便などに自由に変更でき、その一方で観光・私用等目的は、値段は安いけれどもその便に拘束される、という違いがあります。
県は静岡空港の業務目的の運賃については、通常運賃と往復割引運賃の平均としています。また観光・私用等目的は、「類似空港」の「特定便・事前購入割引の平均値」の割引率を、通常運賃に掛けて求めています。つまりどちらも通常運賃がもとになっているわけです。

2) 羽田より安い往復割引運賃設定
静岡空港の往復割引運賃を算出するのに「類似空港」の仙台15%、小松15%、福島16%、新潟15%の平均を使い、15%としていますが、今度は東京4%、名古屋5%を使っていません。先ほどの通常運賃を算出するときには安いグループを使い、往復割引を算出するときには割引率の多いグループを使うのは、いいとこ取りであるといわれても仕方がありません。
その結果、羽田からはるかに距離があり、競争も少ない静岡空港の札幌便の往復割引運賃が、羽田のものより安くなるという矛盾が出てきています。

図(5) 札幌便における往復割引運賃と距離の比較表

通常運賃(円) 往復割引運賃(円) 割引率 距離(キロ)
東京−札幌 25,200 24,200 4 822
静岡−札幌 28,200 23,900 15 940

3) は省略

2) 県の反論−「静岡空港の需要予測結果に関する県の考え方」


これに対して県は、6月11日に監視委員会に提出した「静岡空港の需要予測結果に関する県の考え方」において、

最も割安な空港であると考えられる羽田空港や名古屋空港の運賃から算出された静岡空港の運賃が安く設定されているのではないかという指摘があるが、下の例の札幌−広島、札幌−松山、札幌−鹿児島路線の例に見られるとおり、運賃の設定において、一概に地方空港の路線が高く、羽田・名古屋が最も割安な空港という事実はない。


と私たちが指摘した一番安い水準の東京、名古屋との距離案分で算出した運賃は不当に安いという指摘に対して、「一概に地方空港の路線が高く、羽田・名古屋が最も割安な空港という事実はない」と一刀両断に切り捨てた。しかもその理由は、

航空会社によると、片道通常運賃は、空港間の飛行距離を基本として、周辺の空港との競合関係等を勘案して設定することが一般的であり、また、過去からの経緯で北側は割高となっているとのことであった。同様に、このことから、静岡空港の片道通常運賃については、羽田空港と名古屋空港との競合関係を考慮した上で、飛行距離を基本に設定することは妥当と思慮されるとのことであった。

というのである。この問題の核心ともいうべき重要なことを、(どことも明らかにできない)「航空会社がいっているから」という一言で片付けてしまっているのである。

3) 運賃問題は県の需要予測の是非の核心


これに先立って私たちは、需要予測感度分析を実施した。これは「前回の需要予測の手法(私たちが2001年11月の静岡空港専門家委員会で参考人として県の予測をやり直したもので反論)により、今回の県が設定した前提条件である運賃、アクセス時間を計算したものと、こちらが提案した運賃、アクセス時間との比較により、需要予測にどれだけの程度の影響があるかを明らかにするため」に実施したものである。


私たちはこのときに、新需要予測とは条件が違うので「利用者数そのものの数値は参考にならないが、前提条件の変化によって利用者数がどのくらい変化するかを把握することができる。県が示した106万人という数値が、どのぐらい減るかを把握する参考になる」と断って実施をしている。


札幌便を例として「前提条件」としては、小松便を参考にした運賃(県の示した業務用運賃26,100円から31,600円)、東京、名古屋へ行くアクセス時間(静岡市から飛行機に乗るまでの時間、県の示したそれぞれ284分、285分から266分、260分、浜松市から飛行機に乗るまでの時間、県のそれぞれ317分、251分から288分、234分)、の改善を実施した。特に運賃による静岡空港の選択確率の減少(当初に対して74.3%にまで減少)は著しく、これだけでも後で述べる費用対効果の費用便益費は1を大きく割り込むものとなるほどの減少を示す。

4) 私たちが小松空港をもとに運賃算定した理由


したがって運賃問題は、この問題で最も重要なもののひとつである。私たちは「なぜ小松便をもとに通常運賃を算定したか」を記者会見し、小松便を参考にして運賃を計算したことについて、

私たちは下表の各空港からの通常運賃をみて、

(1) 原則としては、運賃は距離に比例する

(2) 大都市、需要が多い空港は割安である
これは規模の経済により一定の合理的な運営ができるためと、競争の原理が働くためであろう。

(3) 近距離の運賃は割高に、遠距離の運賃は割安になる
航空のコストの中で、大きな比重を占めるジェット燃料の消費が、主に離陸と着陸により多く、飛行中は相対的に消費が少ないということか。

ということが確認できる。

(1)はあくまで原則であるが、(2)も厳然たる事実で、県の新需要予測は、その中でも最も割安な空港であると考えられる東京、名古屋の距離按分で通常運賃を算出したということは、とりわけ正確を期さなければならない新需要予測を確定する上でしてはいけないことと考える。

私たちは、(3)を考慮し、地方空港の中でも比較的距離が近い小松空港との距離按分により算出した。

小松は、県が往復割引運賃を算出する際の「羽田空港や名古屋空港との競合関係、需要規模を勘案して(県の「報告書」P1-30)」対象とした「類似空港」のひとつである(他は仙台、福島、新潟)。この中でいちばん静岡空港との距離が近い小松を参考とした。ちなみに県が選定した類似空港全部の距離あたりの運賃の平均をとると38,300円となる。県が理由をつけて類似空港として選定したのだからこの値をとってもよかったのだが、今回は(3)の原則から距離的に一番近い小松を選ぶのが正確と考えた。

としているにもかかわらず、県は「一概に地方空港の路線が高く、羽田・名古屋が最も割安な空港という事実はない」として、これまた「航空会社がいっているから」という、本来監視委員会がきちんとしていれば、とても検討に耐えられないような論拠で反論しているのである。

5) 問題をおおいかくす監視委員会


私たちは以上述べた「なぜ小松便をもとに通常運賃を算定したか」についても、議論の参考にしてもらおうと委員のみなさんに郵送した。しかし監視委員会の中で、議論は起きないのである。委員は些末な「こだま」と「ひかり」のアクセス時間であるとか、維持補修費の定義であるとか、まるで運賃問題を避けるように議論が進んだ。


それもそのはず、向坂委員長が監視委員会の中で「私は個人的には、先月の5月23日まで意見を聞くという形をとってますので、そこから後来られた分については、一切開封もしないし、読んでおりません。今後も、私のところに送られてきたのは一切読みません」(6月17日、第五回委員会議事録より)という驚くべき発言をしている。地元のマスコミだけでなく、全国のマスコミもこの件に注目し、連日報道がされている中で、そもそも自分が意見を寄せろと要請した会からの文書を「いっさい読みません」とは、空港推進に都合のいいことしか聞かないということではないのだろうか。
この運賃問題を、6月11日の第四回委員会で議論しなかった監視委員会の責任は、重大である。

6) 県の匿名批判に反論


私たちは6月15日しかし日にちていないかどうか」「客観的に監視していく」ことをする「『静岡空港の需要予測結果に関する県の考え方について』をどう見るのか」を委員に送付した。しかし前述の発言である。

しかしその後、6月17日、第五回委員会で再反論を文書で提出する機会が与えられた。私たちは再び「需要予測『県の考え方』に反論する」によって、県が指摘した論点に反論した。

その反論としては、

1) 主要なものの感度分析をした上でその可否について論議すべき
@低すぎる静岡空港の運賃、A浜松から中部国際への自動車のアクセス、B評価便数など、影響の大きなものをさけて些細なものの感度分析のみを行っている県のやり方はおかしい。重要なものの感度分析をした上で、その可否を議論すべき。

2) 匿名の航空関係者の言葉を借りて反論するのではなく、その内容を議論すべきであり、航空関係者を参考人として呼ぶべき


ここでその文章を引用する。

県は匿名の航空関係者の言葉を借りて、「過去の経緯から北側は割高となっている」とこれだけでは何をさすかわからない説明(「北側」?どこの「北側」?)をしています。前後の文脈から「周辺の空港との競合関係等を勘案して設定」となっているのと同時に、「北側」というのは、委員会の県答弁において日本海側の競争がない空港といわれていますので東北の太平洋側はこれに入らないのでしょうか。不明確です。

まず、はたして「地方空港が高く、羽田・名古屋が最も割安な空港という事実はない」といえるのでしょうか。
次のグラフをご覧ください。これは札幌便のキロあたりの運賃と、距離を比較したものです。

札幌便の通常運賃におけるキロあたりの運賃と距離

はっきりと二つの分布が読みとれるのではないでしょうか。ひとつは、鹿児島から始まって、松山、岡山、小松、福島、新潟、仙台とつらなるライン。もうひとつは、福岡から始まって、広島、大阪、名古屋、羽田とつらなるラインです(松本は特割など割引がない分、通常運賃を安く設定している)。前者は第二種空港や第三種空港で、いわゆる「地方空港」といわれる空港。後者は第一種をはじめとして需要の多い第二種がならんでいます。ここでいえることは、大都市や需要の多い空港は、安い運賃設定ができるということです。ほんとうに「地方空港が高く、羽田・名古屋が最も割安な空港という事実はない」のでしょうか。
私たちは、地方空港の運賃設定とより安い大空港の運賃設定が存在しており、静岡空港の運賃については、明確に前者のラインに属すると考えます。

つづいて、那覇便を比較してみましょう。
札幌便とは同じかたちのグラフになりますが、北と南がはっきり逆転しています。その中でも、やはりはっきりと二つのラインが見えます。鹿児島、宮崎から始まって、小松、福島、仙台へと至るライン、そして福岡、大阪、名古屋、羽田という大空港ラインです。「地方空港が高く、羽田・名古屋が最も割安な空港という事実はない」ということは、はっきり否定されます。静岡空港の運賃設定は、どう考えても羽田や名古屋の運賃設定のラインではおかしいのではないでしょうか。

那覇便の通所運賃におけるキロあたりの運賃と距離


しかも航空会社が言っているとされる「北側は割高な運賃設定になってといる」ということも、はっきり否定されるではありませんか。那覇便において、「南側」が割高になっている事実が浮かび上がります。
県が「考え方」の中で示していることでは、全く説明ができません。私たちがこれまで述べてきた通常運賃の原則、@ 原則としては、運賃は距離に比例する、A 大都市、需要が多い空港は割安である、B 近距離の運賃は割高に、遠距離の運賃は割安になるが、これによって証明されるのではないでしょうか。

つづいて、私たちが札幌便で示したものと同じグラフを見てみましょう。このグラフを見ても、名古屋、静岡、東京の距離と運賃が他の空港に比べて大きく離れています。静岡空港の運賃の設定があまりに低いのが見て取れるのではないでしょうか。しかも「南側」の便と比べてもです。
このような不公正な運賃設定をしたために、静岡空港の需要予測は、たいへん過大なものになったことはまちがいありません
委員のみなさんの真摯な議論を期待しています。

そしてさらに私たちは、航空関係者の参考人招致を要請した。

私たちは県の説明を聞いたとき、不思議に思ったのは、さかんに「航空会社は」ということがでてきていることです。航空会社一般として県は言っており、どこの誰という特定はありません。
しかし私たちのような素人が指摘しても、航空会社が言ったとされることの中に矛盾があると考えられる以上、ほんとうに航空会社がそのように言ったのかどうか、どのような状況での発言だったのかなど、たいへん疑問があると考えます。県が運賃設定の一大根拠としている重要な証言である以上、委員会が参考人として呼び真意を確認する必要があるのではないでしょうか。
また、たとえば「周辺の空港との競合関係等を勘案して設定することが一般的」と航空会社は言っているのですが、それについてもたいへん疑問があります。ほんとうに東京、名古屋という大都市の需要が多い空港の「競合関係等を勘案した」運賃で、静岡空港が商売としてやっていけるのかどうか、路線を開設できるのかどうか、ぜひ委員会によって参考人を招致する中で検証していただきたいと思います。
もっとも県が、税金から補助金を出すから「競合関係等を勘案した」運賃を設定してほしいと質問していれば別ですが・・・

7) またしても無視−「需要予測に関する静岡空港・建設中止の会の反論に対する県の考え方」


原文は最後のところで「委員のみなさんの真摯な議論を期待しています」とアンダーラインを引いておいたが、これはむなしい期待だった。他にも県の意図的な相関分析への反論など、論点があるのだが、ここでは省略する。

県の反論は、

運賃設定については、需要等検討委員会において、競合状況などを総合的に勘案し、議論・検討の上、了承されたものであるが、今回、県として想定し得る範囲で感度分析も行ったところである。
航空運賃は、新幹線などの他の交通機関との競合、空港間の競合、航空会社間の競合など、それぞれの路線ごとの固有の状況を踏まえて決定されているものであり、今回の需要予測における静岡空港の運賃設定にあたっては、競合関係となる羽田、名古屋空港を算定の基礎に置くこととされたものである。(「需要予測に関する静岡空港・建設中止の会の反論に対する県の考え方」2ページ)

というものだった。

これをのれんに腕押しといわずに、何というのだろうか。しかしあまりに露骨な争点そらしである。これだけ論点が絞られてきたのに、それを受けてたとうとするのではなく、「正しいから正しい」という以外に何ら理由のない回答といわねばならない。


しかし監視委員会では、推して知るべし、誰一人このことにふれる委員はいなかった。

8) 監視委員会は任務を放棄した


その結末として、第七回委員会で出した結論が「建設は適当」というものだった。この日、ここまで煮詰まった論点を、会議の中で取り上げた委員が一人もいなかったのである。私たちの会と県は、密室の中のやりとりをしていたのではけっしてなかった。これは、その当時の新聞、地方紙も全国紙も、連日報道し続けていた。県民の中からも、県の需要はおかしいという声が噴出していた。その一番県民が疑念を持っている主要な運賃問題を、監視委員会で議論することなく「建設は適当」と結論を出したのだ。


そしてその記者会見で述べられたのが、冒頭部分でも紹介した向坂委員長の「委員会は県の事業継続という結論について、その妥当性を判断するだけで、需要予測や土地収用法の適用など政策的なことを検討する場ではない」という発言である。これだけとってもこの結論は意味をなさない。

(2) 新幹線の品川停車など


県の需要予測の疑念は運賃問題にとどまらない。
県は、新需要予測では品川停車を考慮したと高らかにうたっているが、内容を吟味するととてもそういえる内容になっていない。「品川停車」「新中部国際空港を考慮」というのは、羽田、新中部を有利になると誰もが考えるのだが、県の新需要予測の内容はまったく違っている。羽田に関していえば、品川停車でかえって不利になるような設定を行なっている。


これまで、

静岡(ひかり)東京(山手線)浜松町(モノレール)羽田空港

となっていたものが、

静岡(こだま)品川(京急)蒲田(京急)羽田空港

となる。これは会のHPで、「ここがヘンだよ新需要予測」を参考にしてほしい。

しかし事態はもっと羽田に有利に展開している。10月1日付で発表になったダイヤでは、

1) 県は品川に「ひかり」はとまらない前提としているが、現実には1本の例外を除きすべてとまる。

2) 京急は広告で、直通特急、品川−羽田空港14分とうたっている。

3) ダイヤ改正により、静岡からのダイヤが大幅に改善され、
6時台、こだま1本から2本
7時台、ごだま3本から4本、ひかり1本から2本
また始発、6時47分から6時21分と大幅に早く出発できる。

これによって県の評価便数が修正を迫られる。アクセス時間が短縮されるだけでなく、便数にも影響を及ぼすもので、決して無視できる程度のものではない。

これについてもきちんと感度分析を実施すべきである。県が結論を出したすぐ一月後にHPで公表されたものであり、県は知っていながら不利な事実を隠ししていたといわれないためにもそうすべきである。

(3) その他の事項


私たちはこれらのほかにも、@浜松から新中部への自動車のアクセス、A静岡、三島からの羽田への自動車のアクセス、B羽田、新中部への自動車アクセスを認めないこと、C評価便数の是非、D費用対効果における管理運営経費の算出など、数々の問題点を指摘してきた。


とりわけ浜松からの新中部へのアクセスは、来年度開通予定の高速道路を無視し、岡崎インターで高速道路から一般道路へおろして新中部までアクセスしている。これによって高速道路を全部使った新中部のHPのアクセス時間より、1時間程度長いものとなってしまう。このやり方は「新幹線の品川開業を加味している」と同じで、新しいものを取り入れていると見せて他空港を不利にする意図的なやり方である。

こうした操作の結果、最初にふれたように県内各都市からの静岡空港の選択確率が、県民の実感と比べてきわめて高くなったし、下表にあるように県外の他都市でさえ、その都市の住民が聞いたら笑い出すか、怒り出すような数字である。札幌へ行くのに小田原市民が箱根山を越えて戻り、なぜ14%もの利用があるのだろうか。甲府市民が山道をくるまで走って、便数の少ない静岡空港を市民の半数近くが利用するのだろうか。浜松から新中部のアクセスは、できるとわかっている高速道路を無視し、甲府から静岡空港へのアクセスは、できることが開港時にはできないことがわかっている中部横断道を使ったのだろうか。たとえ使ったとしてもこれだけの数字がでるのは異様である。

県外各都市からの空港選択確率

こうしたことも、県が意図的に需要予測の前提条件を操作した結果であると考える。

3 結論 


折しも三位一体改革のさなかである。補助金削減が年末新聞をにぎわし、福祉や教育の補助金が削減された。

その中で静岡空港の補助金だけが、ぬくぬくと維持されることについて県民のみならず国民は納得できない。しかもこのようなずさんで自らの任務を省みない議論をした監視委員会の結論により、もし静岡空港に対する補助金が継続されることとなれば、国土交通省は国民の信頼を失うことになるだろう。(需要予測を受託した運輸政策研究機構も、信用を失うだろう。

事実を検証され、補助金の継続をしないこと、このような姑息な報告により国民を欺こうとした県に対して、適切な関与をすべきである。