静岡空港の需要は36万人
(鹿児島は路線不成立)
〜 県予測106万人は夢物語 〜


静岡空港・建設中止の会


はじめに

未だ県は、私たちが12月8日付けで要求した需要予測のデータのすべてを公開に応じず、不誠実な態度に終始している。
今年の9月議会で、県が算出した静岡空港の需要予測の基礎となる平成12年度全国幹線旅客純流動調査のデータを水増ししたことが判明した。これまで会が指摘してきた運賃・アクセスの水増しとあわせて正確に算出されるならば、事業再評価の中で費用対効果においては適切な事業と判断されないことは明白と考える。
そこで限られた公開資料から解明された県の需要予測の成り立ちを検証した上で、実際の需要はどの程度になるかという試算を「静岡空港・建設中止の会」であらためて行ったところ、実際の需要は3路線(鹿児島線は需要不足で不成立)3〜5便で36万人程度 (路線成立可能性)しか見込めないことが明らかになった。

1 県の需要予測はどうのように作られたか。

県の106万人という需要予測の数字は、事業を継続させるために大幅に水増しされたものであることが判明した。からくりは主に次の2つである。
第一は、需要予測に際して用いられた航空データの改ざんである。県は平成
12年度全国幹線旅客純流動調査当日の数字を悪天候のため「特異値」であるとして、平成7年度のそれを用いて補正し、静岡県と全国の間の流動量を大幅に水増しさせたのである。さらに、最終的な開港年における交通量はこれを基にさらに割増され需要予測が行われている。
第二は、旅行者の空港選択にあたって、試算の前提条件である運賃設定やアクセス方法・時間設定、就航予定便数等を「静岡空港には有利に、羽田・中部国際には不利に」設定した点である。
 その仕組みは以下のとおりで、静岡−北海道間交通量を例に説明すれば、平成12年交通量27万人を補正と称し51万人に水増しし、これに人口増とGDPを基に自然増を加え開港年51万8千人の交通量に、さらにこれに空港整備などによる需要増(誘発需要)を従業人口を基に算出し、最終的には65万5千人としたのである。実に平成12年実績に比べ2.4倍にも膨らんだ交通量予測に基づいて静岡空港と新千歳便の需要50万人が生まれたということである(県報告書1-55,1-67,1-78参照)。

静岡県 ⇔ 12年交通量実績 12年補正 18年交通量 18年交通量 18年航空 18年県の静岡空港需要予測
(水増率) (自然増率) (誘発増率) (航空分担)
北海道 270千人 510千人 518千人 655千人 647千人 新千歳
(+89%) (+2%) (+27%) -0.991 50万人
福岡県 393千人 379千人 391千人 425千人 184千人 福岡
(−4%) (+3%) (+9%) -0.435 24万人
鹿児島県 80千人 119千人 125千人 160千人 151千人 鹿児島
(+49%) (+5%) (+28%) -0.946 17万人
沖縄県 89千人 93千人 100千人 132千人 131千人 那覇
(+5%) (+8%) (+33%) -0.986 15万人
注:交通量、需要予測ともすべて往復。

さらにここで、注目すべきは新千歳路線では道県間需要よりも少ない需要でありながら、他の3路線では何と静岡県民全てが使うよりも多い需要予測結果となっている点である。さすがに北海道については、羽田は函館から紋別まで道内全域に路線を有し、全国からも羽田経由で利用するくらいであるため道内需要をすべて静岡空港からとはいかなかったのであろうが、県が今回の需要予測で愛知、神奈川、山梨、長野の155市郡区(*県報告書1-3)を「静岡空港の利用が想定される地域」として拡大設定し、羽田空港や中部国際空港よりも安い航空運賃とそれら空港アクセスの不利な設定により、他県からの需要を大きく見込んでいる実態がよくわかる結果である。

県需要予測における県外各都市の新千歳便空港選択確率(県公表)

静岡

羽田

中部

松本
小田原市

14%

86%

0%

0%

甲府市

48%

36%

0%

16%

豊橋市

40%

0%

60%

0%


県は、これら他県の市郡区の流動量や航空分担を明らかにせず、利用者数の全容は不明である。しかし、他県からの利用者数(需要)はほとんど見込むべきほどの数字ではないと考えるのが、静岡県民ならびに利用を想定された他県民の実感ではなかろうか。
また、県の新千歳便の需要予測値(50万人)は岡山空港と広島空港を合わせた需要(約43万人)よりも多い(*数字で見る航空2004収録の平成14年度旅客数)のであって、羽田と中部国際に挟まれた静岡空港ではありえない予測である。
新千歳便の異常な多さは、平成12年度の流動実績を基に作られた静岡空港需要予測と近隣空港実績の路線別旅客数構成比率(*数字で見る航空2002収録の平成12年度旅客数)の比較からも明白であり、県の需要予測の妥当性を疑わざるを得ない。


2 実際の需要はどのくらいか


 それでは、実際の静岡空港の需要はどのくらいになるかということであるが、本来なら私たちが県に要求した各地からの交通費やアクセス時間等の設定データを会の求めるデータと入れ替えた設定データで需要予測をやり直せば良いのである。しかし、県はデータの公開にすら応じていないのが実態で、これは事実上不可能である。
 そこである程度振れ幅のある予測とならざるを得ないものの、以下のとおり需要を予測するものである。

(1) 方法について
県の需要予測値をベースにしてこれを算出するために作為的に割増したものを控除していく方法により算出した。
控除するものは流動量(交通量)水増、運賃・アクセスによる水増のほか、従業人口を基にはじき出した誘発需要が、本社機能の多い東京や名古屋と同じ誘発効果としてよいか、元々交通利便性のそれほど低くない静岡県で考慮すべきほど発生することには疑問があるためこれを控除した試算も行った。
路線成立の可能性についてであるが、1便程度の需要となればどちらか一方にとっては不便な路線とならざるを得ないため原則不成立とした。ただし、沖縄については時期的観光需要が主であるため一応成立を認めている。
また、本来ならば他県からの需要を控除し、これらの空港選択比率を求めるべきであるがその実態が明らかでないため、これらも割戻し前の需要に含めている。

(2) 結果について
結果は以下のとおりである。


(その1:交通量による水増及び運賃・アクセスによる水増しを控除…運賃・アクセスの控除率は「静岡空港・中止の会」が昨年4月に発表した「感度分析」で採用した33.8%)

静岡⇔ 新千歳 福岡 鹿児島 那覇 合計
需要(往復) 18万人 16万人 8万人 10万人 51万人
便数 1〜2便 1〜2便 1便 1便 4〜6便


(その2:さらに、誘発需要を控除)

静岡⇔ 新千歳 福岡 鹿児島 那覇 合計
需要(往復) 14万人 15万人 6万人 7万人 42万人


(その3:これに路線の成立可能性を考慮した結果)

静岡⇔ 新千歳 福岡 鹿児島 那覇 合計
需要(往復) 14万人 15万人 不成立 7万人 36万人
便数 1〜2便 1〜2便 0便 夏季1便 3〜5便

(3) 妥当性について
この結果、平成12年度の流動実績を基に作られた静岡空港需要予測と平成12年度の近隣空港実績の路線別旅客数構成比率との比較は以下のとおり妥当なものとなり、これを、県の予測と鹿児島を含めた会予測と近隣の名古屋空港実績との3者比較でも極めて実態に合致したものとなった。

36万人予測と近隣空港実績(12年)構成比比較

県予測と会予測と名古屋空港実績

まとめ


  以上のことから、静岡空港の県需要予測である4路線、14便、106万人需要は達成不可能な「夢」に過ぎず、現実は、開港しても3路線、3〜5便(すべて小型機)、36万人程度の需要が静岡空港の需要予測すなわち路線成立可能性としては妥当なものである。