2003年7月4日


静岡県事業評価監視委員会
委員長 向坂達也 様


静岡空港・建設中止の会

「静岡空港の需要予測結果に関する県の考え方について」に反論する

真摯に県民の視線から県の事業をチェックされる姿勢に敬意を表します。
さる6月11日の第4回静岡県事業評価監視委員会で、私たち静岡空港・建設中止の会の新需要予測等の見解、「静岡空港の需要予測結果に関する県の考え方について」(以下「考え方」)を示しました。それに対して、委員会の確認により反論の機会を与えられましたのでここに文書で提出します。
6月15日に、県の『考え方』があまりに一方的な内容だったため、各委員のみなさまに、「『静岡空港の需要予測結果に関する県の考え方について』をどう見るのか」を送付させていただきました。しかし委員会のなかでまだ封を切っていない委員の方もいるということでしたので、前回の内容も含めあらためて文書を提出します。重複についてはお許し願いたいと思います。

1 空港からの選択確率について

(1) まぎらわしい北海道全体への選択確率
私たちが、県の需要予測について「県民の実感からかけ離れている」と断言したのは、県内各都市から札幌へ行くのに選択する空港として、


静岡 羽田 中部
静岡市(仕事) 98.0% 2.0% 0.0%
静岡市(観光) 92.6% 7.4% 0.0%
浜松市(仕事) 97.3% 0.0% 2.7%
浜松市(観光) 89.7% 0.0% 12.1%
三島市(仕事) 74.9% 25.1% 0.0%
三島市(観光) 49.8% 50.2% 0.0%


(第3回静岡県事業評価監視委員会・5月30日配布資料より)
と、県民の生活実感では考えられない確率となっているためです。ところが県はこの印象を薄めるために、「考え方」の最初で出してきた各都市からの違う選択確率を提示してきました。


静岡

羽田

中部
静岡市 70% 30% 0%
浜松市 74% 6% 19%
三島市 29% 71% 0%

というものです。一つの路線で、このぐらいなら(他空港も一定選択されているという意味で)まあ妥当かなと思ってしまう数字(それでもまだ過大なのですが)です。


しかしこれは札幌便を利用する人の空港の選択確率ではありません。どういう数字かというと、委員会の中の議論でもわかるとおり、県内各都市から北海道全体へ航空を使っていく数字なのです。なんとまぎらわしいのでしょうか。つまり羽田空港を選択する数字の中には、旭川空港、女満別空港、釧路空港、稚内空港、帯広空港、函館空港へ行く数字も入っているのです。静岡空港から飛ばない空港も入れた数字で比較しており、決して札幌便に対しての比較ではありません。もし「県内主要都市と各空港の選択確率」というならば、札幌便の利用に対する選択確率で比較するのが筋ではないでしょうか。県は、わざわざ紛らわしい数字を出して、静岡空港の選択確率が県の需要予測でいかに低く見えるか、他の空港も一定選択されているのかを演出しているのです。

(2) 県外から札幌便だけで9万人も利用
事業評価監視委員会の議論で県民が驚いたのは、静岡空港利用者の中に県外の方が多くいるということ、とりわけ札幌便では50万人の利用者のうち約9万人が他県を出発し静岡空港を利用して札幌へ行く人、札幌から静岡空港を利用し他県へ行く人だということです。
静岡県は、近隣に便利な空港(羽田空港は国内線利用者数が世界第4位であるほど便数が集中した便利な空港です)があるため、静岡空港以外の空港へ流出するということが常識ですが、なんと静岡空港を使う人の2割近くが他県から利用しにくるというのです。
県空港企画室に問い合わせた県外各都市別の札幌便の空港選択確率は、

静岡 羽田 中部 松本
小田原市 14% 86% 0% 0%
甲府市 48% 36% 0% 16%
豊橋市 40% 0% 60% 0%

と静岡空港を選択する確率は、他県の各都市でかなり高くなるのです。
もちろんこれらの都市の住民からすれば、生活実感からかけ離れていることはまちがいありません。甲府から静岡までは身延線特急で2時間9分です。そこからリムジンバスに乗り換えて40分かかるのです。羽田へは全行程2時間24分で行けるのです。それなのに半分近くの人が静岡空港を利用するのでしょうか。
ここにも他空港を不利に、静岡空港を有利に扱いすぎているため、思いもよらぬ普通の実感とはずれる場面が浮かび上がってくるのです。
だからこそ県は都合のいいデータだけを見せて、それらをできるだけ覆い隠したいのです。

2 私たちの感度分析について 県は、目的をねじ曲げて反論

県は、「考え方」の最後のところで2ページにもわたって私たちの感度分析について、「主張に一貫性を欠く」「感度分析といえるものではなく、妥当性を欠く」と感情的なまでに声高に叫んでいます。
私たちがなぜ「感度分析」を行ったかでいえば、その前提の説明で「県が2000年度に出した県の前回の需要予測の手法(私たちが2001年11月の静岡空港専門家委員会で参考人として反論)で、今回の県が設定した前提条件である運賃、アクセス時間を計算したものと、会が提案した運賃、アクセス時間との比較により、需要予測にどの程度の影響があるかを明らかにするため、感度分析を行う」としています。
また委員のみなさまにも、県にもわたっている文書の中で「会として需要予測を正確に求めることが目的ではなく、需要予測にとって価格と時間の設定の影響がいかに大きいかを明らかにし、県に対して需要予測のやり直しを求めることが目的である」と説明しています。

こちらが行った感度分析は前のモデルを利用したものであり、「需要予測を正確に求めることが目的でない」とことわっているにもかかわらず、それをあたかも鬼の首でも取ったように反論しているのはなぜでしょうか。それは次のような理由です。(3につづく)

私たちは「需要予測を正確に求めるのが目的でない」としているにもかかわらず、知事は、私たちの感度分析の数値を需要予測として取り扱っています。その上、6月県議会の中で「年間106万人の県の需要予測に対し、反対グループの主張は70万人。石川知事は国際便や小型便、貨物便の議論がなされずに、『就航予定の中型機以上だけに需要予測議論が集中している』と不満を表明。『それ(中型機だけ)で70万というのは、逆にいうとすごい評価』と、意表を突く発言も飛び出した」(静岡新聞6月27日付)と報道されています。たしかにたいへん「意表を突く発言」ですが、私たちは感度分析では運賃と鉄道のアクセス時間を加味しただけの影響が70万人という数値であり、実際の需要予測はそれ以下と考えるので、「すごい評価」とほめていただかなくてもいいわけです。よほど知事には正確な情報が伝わっていないと見えます。
ちなみに知事がこんなこといえば、106万人でがんばっている空港建設局は志気が上がりませんね、

3 なぜこうまでする必要があったのか

それは、わたしたちがねらいとした「需要予測にとって価格と時間の設定の影響がいかに大きいかを明らかにし、県に対して需要予測のやり直しを求めることが目的である」ということがいちばん恐ろしかったからです。
わたしたちが、いちばん問題視している運賃の議論(その設定によって利用者が大きく異なる)を極力さけたかったからです。
ちなみに県が私たちの指摘した問題点の中でわざわざ条件を変えて利用者数の減少を見る感度分析をしているのは、

@「こだま」を「ひかり」に 0.8万人減
(「考え方」のP13に見るとおり、時間が10分短縮しているが、アクセス費用は、470円増えている。また羽田での乗換時間は、静岡空港40分に対して、60分のまま、据え置いている。そしてこの影響を受けるのは、静岡と浜松等の利用者のみで、全体に対する影響は小さい)


A京急の乗換を直通(1時間になんと6本)に 1万人弱
(時間的には8分短縮のみにとどまるのに加え、一定の割合で存在するバス利用者(静岡から仕事で24%、観光で42%)は除外されるため、影響する人たちの範囲が少ない。しかしそれでも1万人も減少するのには驚きました。)


B自動車へのアクセスを横浜ICに変更 0.3万人
(空港の乗換時間を他空港並みの40分でなく、60分で計算。この感度分析は、私たちが実施した「需要予測感度分析」の対象外ですが、県は実施しています。)

といった微々たる項目です。つまりそれを算出してもさして問題がないと思われる項目についてだけ感度分析を行っているのです。

私たちが指摘した前提条件の中で、いちばん影響の大きいと思われる項目、
@低すぎる静岡空港の運賃
A浜松から中部国際への自動車のアクセス
B評価便数

では不思議なことにいっさい感度分析を明らかにしていません。

もしあれだけの字数をとって、私たちの感度分析について声を荒げて批判するならば、どうぞ新しいモデルで実施してもらいたいと思います。運賃についての感度分析は、県がこれまで実施したケースが複雑な3つとは違い、データを一つ書き換えるだけで技術的には簡単にでます(逆に言えば簡単なものを実施せずに、複雑なものを実施したのです)。私たちの感度分析を批判しているのに、なぜこれらの項目の感度分析をやれないのでしょうか。

なぜか、

これらを計算すると県が主張する「需要予測に全体には大きな影響を与えるものではない」などということはなく減少する度合いが並はずれているため、その結果の影響をいちばん恐れているからです。是非とも我々の主張する運賃設定での感度分析結果を明らかにするよう県に要請していただきたいと思います。

4 運賃設定の議論は避けて通れない

(1) 県の「地方空港が高く、羽田・名古屋が最も割安な空港という事実はない」に反論する
私たちは、運賃をどう決定したかがこの需要予測の中で大きな問題と考えています。私たちが前のモデルと断った上で(新しいモデルで県予測と比較できるほど、県は情報を公開していません。なお現在、情報を提供する場を要求しています)、自分たちの感度分析を行った理由はここにあります。私たちの運賃に対する考えを、県の説明を受けてもう一度述べます。

私たちはこれまで、通常運賃について、
@ 原則としては、運賃は距離に比例する


A 大都市、需要が多い空港は割安である

これは規模の経済により整備や機材繰りの面で一定の合理的な運営ができるためと、競争の原理が働くためであろう。


B 近距離の運賃は割高に、遠距離の運賃は割安になる
航空のコストの中で、大きな比重を占めるジェット燃料の消費が、主に離陸と着陸により、飛行中は相対的に消費が少ないということか。

と、説明してきました。

これに対して県は、
@については、これまでの県の説明では妥当としている。
Aについて、県は「地方空港が高く、羽田・名古屋が最も割安な空港という事実はない」といいきっています。よくこのように言い切ったと感心するくらいの物言いですが、これは今後、さまざまなところで引用されることとなるでしょう。ともかくここは全面的に意見が違うことがわかりました。
Bについては、県は匿名の航空関係者の言葉を借りて、「過去の経緯から北側は割高となっている」とこれだけでは何をさすかわからない説明(「北側」?どこの「北側」?)をしています。前後の文脈から「周辺の空港との競合関係等を勘案して設定」となっているのと同時に、「北側」というのは、委員会の県答弁において日本海側の競争がない空港といわれていますので東北の太平洋側はこれに入らないのでしょうか。不明確です。
というように、ABのところでは、見解が食い違っています。

まず、はたして「地方空港が高く、羽田・名古屋が最も割安な空港という事実はない」といえるのでしょうか。
次のグラフをご覧ください。これは札幌便のキロあたりの運賃と、距離を比較したものです。

札幌便の通常運賃におけるキロあたりの運賃と距離


はっきりと二つの分布が読みとれるのではないでしょうか。ひとつは、鹿児島から始まって、松山、岡山、小松、福島、新潟、仙台とつらなるライン。もうひとつは、福岡から始まって、広島、大阪、名古屋、羽田とつらなるラインです(松本は特割など割引がない分、通常運賃を安く設定している)。前者は第二種空港や第三種空港で、いわゆる「地方空港」といわれる空港。後者は第一種をはじめとして需要の多い第二種がならんでいます。ここでいえることは、大都市や需要の多い空港は、安い運賃設定ができるということです。ほんとうに「地方空港が高く、羽田・名古屋が最も割安な空港という事実はない」のでしょうか。
私たちは、地方空港の運賃設定とより安い大空港の運賃設定が存在しており、静岡空港の運賃については、明確に前者のラインに属すると考えます。

つづいて、那覇便を比較してみましょう。
札幌便とは同じかたちのグラフになりますが、北と南がはっきり逆転しています。その中でも、やはりはっきりと二つのラインが見えます。鹿児島、宮崎から始まって、小松、福島、仙台へと至るライン、そして福岡、大阪、名古屋、羽田という大空港ラインです。「地方空港が高く、羽田・名古屋が最も割安な空港という事実はない」ということは、はっきり否定されます。静岡空港の運賃設定は、どう考えても羽田や名古屋の運賃設定のラインではおかしいのではないでしょうか。

那覇便の通所運賃におけるキロあたりの運賃と距離

しかも航空会社が言っているとされる「北側は割高な運賃設定になってといる」ということも、はっきり否定されるではありませんか。那覇便において、「南側」が割高になっている事実が浮かび上がります。
県が「考え方」の中で示していることでは、全く説明ができません。私たちがこれまで述べてきた通常運賃の原則、@ 原則としては、運賃は距離に比例する、A 大都市、需要が多い空港は割安である、B 近距離の運賃は割高に、遠距離の運賃は割安になるが、これによって証明されるのではないでしょうか。

つづいて、私たちが札幌便で示したものと同じグラフを見てみましょう。このグラフを見ても、名古屋、静岡、東京の距離と運賃が他の空港に比べて大きく離れています。静岡空港の運賃の設定があまりに低いのが見て取れるのではないでしょうか。しかも「南側」の便と比べてもです。


このような不公正な運賃設定をしたために、静岡空港の需要予測は、たいへん過大なものになったことはまちがいありません
委員のみなさんの真摯な議論を期待しています。

(2) 県は意図的なデータで相関分析
県は前述の「地方空港が高く、羽田・名古屋が最も割安な空港という事実はない」というまちがった前提に立って片道通常運賃と区間距離の相関関係により、県設定の「片道通常運賃」の妥当性を証明しようとしています。
ここでも恣意的なデータ、都合のいいデータを使ってそれを導き出しているのです。
まず県は、「政策的に低く設定されている沖縄便を除く全国215路線について、路線別運賃を区間距離(路線距離の平均)によって分析すれば、次のグラフに表されるように、距離と片道通常運賃は、相関係数が0.96という非常に高い相関関係にある」としています。しかし先に述べたように、大空港と地方空港を分けることなく行った分析によるものです。これではその多くが大空港関連の路線であるため、その影響で運賃が安くなるのは当たり前の結果です。

わたしたちは「片道通常運賃」について、これまでみてきた大空港と地方空港の運賃設定について


@ 大空港間、大空港と地方空港を結ぶ路線は、大空港の規模のメリットを生かした資材繰りによって安く設定されている
A 地方空港間の路線は、@よりは高く設定されている
B 「政策的に低く設定されている沖縄便」だけでなく、離島路線についても同じ理由によって低く設定されている


と考えられます。

このことを証明するため私たちも、片道通常運賃と直線距離との全国238路線について相関分析を試みました。これによると全国238路線の相関係数は0.96で非常に高いのですが、この中には県も除いた沖縄便もはいっているとともに、それ以上に政策的に安く押さえられている「離島便」、そして規模のメリットを生かした「大空港便」も含まれているのです。
私たちは、東京(成田含む)、名古屋、大阪(関空含む)、沖縄及び離島を除くJAS、ANA、JAL、ANKによる50路線で運賃と距離との相関分析をしてみました。

この結果、片道通常運賃との相関係数はなんと0.98と十分高いのですが、往復割引運賃(片道相当)と距離との相関分析(相関式:y=20.1x+9752)ではその相関係数は0.99とかなりの高率となりました。

一方、東京、成田、大阪、関西、名古屋の大空港発着の路線の相関分析(往復割引運賃の相関式:y=21.1x+8220)においても片道通常運賃の相関(相関係数0.96)よりも往復割引運賃の相関(相関係数0.97)の方が高いという同様の傾向が確認され、往復割引運賃を基準に片道通常運賃を算出する方が合理的であると判断しました。



したがって、相関式(y=20.1x+9752)及び距離940キロから求めた往復割引運賃が28,631円。これをもとに県設定の標準的割引率の15%で割り戻して算出した通常片道運賃が、33,684円。よって、業務目的運賃は31,157円となります。
また観光目的運賃に関して県は、割引運賃を加味した設定をしているとしています。しかもその内容は、「特定便・事前購入割引の平均値」としていますが、具体的な採用データの詳細と算出方法は明示されていません。
私たちは、前述相関分析に付随して行った特別割引運賃と距離の相関係数が0.97とやはり高いことに着目し、その相関式(y=18.5+9592)と距離940キロから、特別割引運賃27,024円という結果がえられました。県が「往復割引運賃」を算出するときに「羽田空港や名古屋空港との競合関係、需要規模を勘案して(県の「報告書」P1-30)」対象とした「類似空港」(仙台、福島、新潟、小松)の札幌便、福岡便、那覇便の割引率を参考に平均的割引率を算出して得られた観光等目的運賃は、25,936円でした。

類似空港の当該路線表

このように大空港を除く路線での相関分析によって算出された業務目的、観光等目的運賃結果を整理すれば、次のとおりです。
一目で会の運賃設定の方が県より妥当であることがわかります。

県、会、今回の分析値の比較(単位円)

分析値
業務目的 26,100 31,600 31,157
観光目的 21,000 25,300 25,936

県が、あたかも客観的をよそおった分析をつうじて、自らが設定した運賃の正当性を主張しましたが、それは安い運賃設定のものも含めた恣意的なものです。事業評価監視委員会として、県の運賃設定の妥当性を徹底して審議することを強く要請します。

5 「航空会社」の参考人招致を
私たちは県の説明を聞いたとき、不思議に思ったのは、さかんに「航空会社は」ということがでてきていることです。航空会社一般として県は言っており、どこの誰という特定はありません。
しかし私たちのような素人が指摘しても、航空会社が言ったとされることの中に矛盾があると考えられる以上、ほんとうに航空会社がそのように言ったのかどうか、どのような状況での発言だったのかなど、たいへん疑問があると考えます。県が運賃設定の一大根拠としている重要な証言である以上、委員会が参考人として呼び真意を確認する必要があるのではないでしょうか。
また、たとえば「周辺の空港との競合関係等を勘案して設定することが一般的」と航空会社は言っているのですが、それについてもたいへん疑問があります。ほんとうに東京、名古屋という大都市の需要が多い空港の「競合関係等を勘案した」運賃で、静岡空港が商売としてやっていけるのかどうか、路線を開設できるのかどうか、ぜひ委員会によって参考人を招致する中で検証していただきたいと思います。
もっとも県が、税金から補助金を出すから「競合関係等を勘案した」運賃を設定してほしいと質問していれば別ですが・・・

反論へつづく