6 アクセス時間について
(1) 鉄道によるアクセス
◎ひかりについて
静岡市からのひかりの便は現在1日17便であり、新幹線の品川停車にともなってその増便が予想されます。JRでは1時間に2本のひかり停車が可能としています。県は、羽田空港の評価便数を18本と設定するならば、ひかり停車を原則とすべきです。
また浜松からは品川開業にともなって、1時間に1本程度となるひかり停車(現在は5本、中部国際空港の評価便数は6便)を認めないのはおかしなことです。
◎ 羽田の乗換時間について(鉄道)
羽田で航空への乗換時間として、県は他空港の40分より20分多い60分の設定をしています。その理由として「羽田空港は国内随一の規模を誇る空港であり、鉄道地下駅からターミナルビルへの移動、航空会社の受付カウンターへの移動、搭乗手続、セキュリティチェック、搭乗口への移動、搭乗までの待ち時間等、これらに要する時間は、規模の小さい地方空港の実態と比べて相当の開きがある」からとしています。また他空港より長い20分は、「京急羽田空港駅から受け付けカウンターまでの移動にかかる実測時間、混雑する中での受付待ち時間、セキュリティ待ち時間等の推計から見込んでいる」と説明しています。
ふだん羽田を使う人からすれば、一笑に付されることです。
まず他空港の40分がなぜ設定されたかといえば、全国の空港のリムジンバスの到着時間と航空の出発時間の差を平均したものです。したがって手続にかかる時間を採用したわけではないのです。しかし羽田は別格です。モノレールや高速鉄道から直接空港ターミナルへ移動ができ、それらの交通機関は数分おきに発着しています。つまりこの40分が妥当(もっと短くていいという意味で)かどうかも検討しなければなりません。
しかもそれを20分も延ばしているのです。先日も出張で羽田空港を利用したとき、モノレールで滑り込んで20分で飛行機に乗ることができました。第2回需要等検討委員会で配布された資料4「参考資料」の「表 各市からの羽田空港へのアクセス経路と設定所要時間」によれば、「羽田空港→搭乗口」は40分となっており、60分というのはその後の委員会で確認されていません。これは、どう考えても利用者数100万人を確保するために、羽田を不利にした恣意的な措置だと見ざるをえません。


(2) 自動車によるアクセス
◎浜松から中部国際空港へのアクセス
浜松から中部国際空港への自動車のアクセス時間の影響は大きなものがあると考えます。
まず県が設定した浜松から中部国際空港へ向かうアクセス経路は、次の通りです。
●県が設定した経路
浜松市−アクセス(15)−150号線(9.2)−浜松石原−1号線(10)−アクセス東名(5.4)−浜松IC−東名 (42.3)−岡崎IC−アクセス東名(3.4)−1号線(34.1)−知立−155号線(56)−中部国際空港(40)−搭乗
つまり岡崎で高速道路を降りて、一般道路をずっと行くことになります。しかし、中部国際空港のHPをみると、次の経路が表示されています。
浜松市−257号線バイパス−浜松西IC−東名−豊田JC−第二東名−名古屋南JC−知多半島道路−半田常滑IC−知多横断道路−中部国際空港−搭乗
つまり東名、第2東名(伊勢湾岸道路から豊田JAまで)、知多半島道路、知多横断道路とすべて高速道路でアクセスできるのです。
黒 県の経路 グレー 本来考えられる経路

これに対して県の「考え方」では、「第2東名については、名古屋南JAからの一部は平成15年度に開通の見通しがあるものの、豊田JAまでの区間が、需要予測期間に開通することが想定できないため、今回の予測では第2東名を利用した経路を想定していない」としています。しかしこれは事実ではありません。第2東名部分はすでに名古屋南JAから豊明ICまで開通しており、今年度も豊田南ICまで開通の予定です。その後、2005年度の中部国際空港開港までにすべての区間が開通する予定であり、県の説明はまちがっています。
南名古屋JAから
豊明IC すでに開業中
豊田南IC 2003年度中に開通(HPによる)
豊田JA 2004年度中に開通(道路公団に問い合わせ)
また知多半島道路については全く説明されていません。これでは「前提の違いにより所要時間の違いが生じる」わけです。
こうした県の恣意的な前提条件の設定によって、県のアクセス時間(航空への乗換・アクセス部分を除く)は165分であり、中部国際空港のHPでは91分という差が出るわけです。県は、事実にもとづいて前提条件の設定をすべきです。
そしてこの差について感度分析を実施し、県民に示すべきです。
◎羽田への自動車アクセスを認めていない
羽田空港は、空港に付属する駐車場だけで4700台を収容できる大駐車場を持っており、アクセスを公共交通機関に特化した空港ではありません。付属駐車場にとどまらず、付近には商業的な駐車場が数多くあり、地方空港では考えられない便利なサービスを展開しています。
たとえば自動車で羽田空港のターミナルの玄関まで行くと業者が迎えにでて車を預け、帰りも玄関で受け取るシステムもあるのです。また少し離れた駐車場でも、車をおくと送迎バスで玄関口まですみやかに送ってくれるサービスがあり、スムーズに搭乗口まで行けます。
したがって県東部を中心に、広く県民の間では自動車で羽田へのアクセスが行われています。したがって「羽田へ自動車アクセスを認めない」ことは、こうした実態を無視するものであり、公正な需要予測とはいえません。
なぜ県が羽田の自動車アクセスを認めないのか。それは、46便にも及ぶ便数を、需要予測において正確に評価しなければならなくなるからです。現在のように新幹線の本数から算出した「評価便数」を、鉄道アクセスばかりでなく、自動車についても用いることは許されません。
◎羽田の乗換時間について(自動車)
当初県は、羽田での乗換時間を1時間30分として、前提条件により羽田への自動車アクセスをさせない方法(=選択確率を極端に低くする方法)をとりましたが(3月28日、第4回需要等検討委員会配布資料より)、説明がつかないため、最終報告で自動車アクセスを削除したものです。
6 恣意的にサンプルを採取していないことを示すべき
私たちは、県の前回の需要予測に対して、近隣に便利な空港があるのだからきちんとそれを需要予測の中に組み込むべきだと主張しました。総務省等の指摘を受けて、今回県は渋々それを受け入れたわけです。
しかしそれに対してのストッパーを組み込むことも、ぬかりなく行いました。何しろ札幌便で羽田は46便もあるのです。
それが「前泊・後泊なし」の原則です。これから評価便数という考え方がでてきます。100歩譲ってその考え方を認めたとしても、需要等検討委員会で確認された22便という評価便数(第2回需要等検討委員会で提示)を、何ら説明もせずに、実際の計算では18便として評価しているというルール違反を県は行っています。
また羽田朝8時の便に乗らなければ、会議に間に合わないというとき、他の代替がないわけです。どうしてもそれに乗るためには、自動車で行くか、新幹線以外の公共交通手段をとらなければなりません。
県は「ムーンライトながら」の反論を「取り扱う必要がない稀なケース」としていますが、アクセスの方法はそれだけではありません。
たとえば静岡駅5時5分発の普通に乗り6時9分に三島につけば、6時27分のこだま始発に乗れ、7時27分に東京に着きます。そうすれば選択肢はかなり広がります。
しかし早朝の便に乗るために、現にいちばん多くの県民が行っているのは自動車によるアクセスです。ここでもアクセスのところで述べた「羽田への自動車アクセスを認めない」ことがネックになります。
しかし何よりも疑問なのは、「前泊・後泊なし」という前提の上に立ってサンプル抽出やモデル構築が行われたかという点です。県は「考え方」の中で、「評価便数についても、モデル構築・パラメータ推計時には、『前泊・後泊なし』の設定でモデル構築を行っている」としています。
ご承知の通りこの空港選択モデルは、他の類似空港利用のサンプルを採取し、そのサンプルによってモデルが構築されているのです。「考え方」の中で、「平成12年度全国幹線旅客純流動調査における静岡県及び就航先の北海道、福岡県、鹿児島県、沖縄県や静岡県と類似空港がある福島県に関する発着サンプルで、複数の空港選択が可能な地域のサンプルを抽出」とあります。実際に福島空港などの利用者がどのような行動をとったかというサンプルを採取しているのです。それをもとに式をつくって、静岡においてはどの空港を選択するかという確率計算をするのです。
「前泊・後泊なし」は、もう式ができたあとの計算を実施する過程の原則ですが、その原則が事前のサンプル採取時にも適応されたのかどうかという疑問があります。委員会の中でも「各段階でサンプル数が異なっていることについては、恣意性がないことを確認すべき」と意見があがっています。これについて県の考え方が示されなかったため、兵藤委員が疑問を呈しました。それに対して事務局は福島空港など他空港と競合が発生しているようなサンプルを抽出する作業を行っており、次回で示すとしています。それに対して兵藤委員は、「どういう基準でそういうサンプルを選ばれたという数字の基準値かはわかりませんが、やっぱりそういうものをセットで明確に示していただきたいなと思います」(第3回需要等検討委員会、2003年2月21日)といっています。
しかしながら次回の委員会では、モデル式の説明の中で、「航空経路選択モデルを構築する際に用いた平成12年度全国幹線旅客純流動調査のサンプルは、個票データを集計し、各空港へのアクセス実績をもとに、複数の空港に対して選択可能性のあるサンプルを中心に採用した」と記されているだけで、「数字の基準値」は示されておらず、とても恣意性がないことを示す説明といえるものでありません。
だからモデル構築時にどのようなサンプルを採取したのかを県は説明すべきです。
次の表は、前回需要予測と今回需要予測の路線別比較表です。一昨年の5月に総務省が出した「空港の整備等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」の中で「近隣の空港の運航便数が当該空港の運航便数を大きく上回っており、このような要素が当該空港の需要に影響を与える要因の一つとなって、利用実績が需要予測を下回ることとなったと考えられる例がみられた。その背景には、当該事例に係る空港整備の検討当時において、東京国際空港の沖合展開事業が実施中であったこと等から将来の発着枠の制約を想定することが困難であり、また、近隣空港との運航便数差による需要への影響についても具体的予測方法がなかったという事情があると考えられる。しかしながら、現在では、東京国際空港の沖合展開事業はほぼ終了し、当面、首都圏では大幅な発着枠の拡大は見込まれないこと、また、国土交通省においては近年運航便数も分析要素とした予測方法を取り入れているとしていることから、これらの要素に十分配意して今後の空港整備を行う必要があると認められる」としています。この勧告は、県が需要予測のやり直しをせざるをえなかったそもそもの理由となったもので、需要が過大だったから「運行便数も分析要素」として適正な予測にしろと勧告したにもかかわらず、表の通り、便数を評価してもほとんど数値が変わっていないというのはいかがなものかと考えます。
これでは、勧告の意味がなく、結果が先にありきと言われても仕方がないのではないでしょうか。

7 費用対効果の静岡空港の採算について
私たちは、新需要予測の維持補修費4億4500万円について、前回の需要予測の5億2000万円より、理由なくダウンさせているのはおかしいと批判してきました。4億4500万円というのは、「国土交通省の『空港整備事業の費用対効果マニュアル』の数値を全面的に採用したものです。しかしそのマニュアルには『維持補修費については、平均的な目安値として次表を示すが、各空港毎に精査・検討することが望ましい』と書かれています」と指摘しました。そして「私たちは前回の経費の見込みが、他空港の実績を静岡空港の実際の面積等で再試算して出した『精緻』なものであるのにかかわらず、今回マニュアルに書かれている単なるモデル的な数値におき換えるのは、そのマニュアル自体にもそっていないし、赤字かくしであることは明白であると思います」と批判しています。
それに対して県は反論できず、両者の違いは「対象範囲の違い」と逃げにかかっています。例としてあげている「滑走路のオーバーレイなどの改良再投資費用」についても、将来の支出となるものであり、県民の実感からは、静岡空港を維持運営するための経費のなにものでもありません。それが支出にはいっていないのはおかしいのではないでしょうか。
そして私たちの最大の疑問は、マニュアルが「各空港毎に精査・検討するのが望ましい」としているにもかかわらずなぜそれをしなかったのかということです。
また県は「他県における着陸料の減額や助成については」、「空港自体の管理経費とは別に判断すべきもの」としています。しかし県民が不安に思っているのは、「将来空港のためにどれだけの県費が投入されつづけるのか」ということであって、空港運営会社の赤字・黒字の問題ではありません。管理経費とは別の費目だから県費の投入はいくらでも許されるなど納得できるわけがありません。
県の考えは、「本来的な赤字とは別に県費を投入する」というものであり、そのこと自体が非常に問題と考えます。
たとえば第4回需要等検討委員会(3月28日)においても、委員のひとりが駐車場無料化について質問したのに対し、空港建設局次長が「今、静岡空港に関しては、基本施設も一体的に運営する空港会社の設立ということを地元経済界などと調整している状況でございますが、その中で、会社側から見れば、そこは重要な財源ですから、そこはあるいは有料にしたいという部分があって、政策的に会社に無料でということを求めていくということになりますと、そこの部分については一定かぶってもらうということになります。県の政策によって負担をかけているということになりますので、そこについては委託費なりの何らかの対応をして、企業経営として成立していくような枠組みを考えていくということで考えておりますし、そういう話を経済界ともしているところであります」と述べました。
こうした考えは、赤字ならばその赤字とは別の名目で、「委託費なりの何らかの対応をして」どんどん県費をつぎ込むという考えであり、「民間主導の空港運営会社」に空港を委ねる方針とはいっても、県費をつぎ込んだ上の「運営会社の黒字」・「運営会社の効率化」・「民営化」であったら県民は納得できません。
8 県民の視線で議論されることを再度望みます
これだけの疑問を、結論もでないまま放置することは許されることではありません。私たちが指摘した前提条件を変えることにより、明らかに費用対効果は1を割り込みます。事業評価監視委員会は、この現実に目をつぶるべきではありません。
前回の事業評価監視委員会で議論された「空港を成功に導く三つの重点戦略」も、毎日新聞の社説で「『アジアの物流戦略の拠点に』とか、イベントや国際会議を誘致するための『機能の整備』をあげたが、なんら目新しくない。空港建設に行政が引きずり回されている」(6月22日付社説「静岡空港 住民の意思を聞くべきだ
」)とされています。
いちばんベーシックな議論をさけて、「夢のような」議論に入り込むことは、県民が期待する事業評価監視委員会の任務ではありません。
あらためて委員会にお願いするのは、この需要予測の問題、全県民が注目しています。ぜひとも県民の視線をで、静岡空港を再評価いただくようお願いします。
最後に、県の「考え方」の反論の中で、いくつか要望をさせていただきましたが、それを確認していきます。
1 私たちが、県の新需要予測に対して問題として指摘した項目の感度分析を県に実施させてください。
2 その項目、とくに運賃設定が妥当なのかどうかを県民の視線で議論してください。
3 その際、県が引用している「航空会社」の方を、その主張を検証するため、参考人として呼んでください。
4 県民の要望に添う結果を出すようお願いします。